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「今の状況は幸せですか?」みなさんは、この問いかけにどう答えますか?
実は、残念ながら、日本では16~34歳で「はい」と答えた人はたったの8%。8~15歳で幸せと答えた子どもたちは13%だけでした。これは、世界14カ国で計5,200名対象に行なった幸福に関するMTVの調査結果です。対象国は、アルゼンチン、ブラジル、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、南アフリカ、スウェーデン、イギリス、アメリカ。ちなみに平均は16~34歳が43%、8~15歳が57%なので、日本は突出して低い数字というのがわかります。
また、イギリスの社会心理学者エードリアン・ホワイト氏の分析による178カ国の「GNH(国民の幸福度)ランキング2006」では、1位デンマーク、2位スイス、3位オーストリア、4位アイスランド、5位バハマ、6位フィンランド、7位スウェーデン、8位ブータン。日本はというと、なんと90位。ちなみにアメリカは23位で、中国は82位でした。これらのデータを見るまでもなく、すでに今の日本社会が早急に見直しを迫られていることを感じている人も少なくないでしょう。
先ほども出てきた「GNH」という言葉を最近、耳にすることが多くなった気がします。もともとブータンの第4代国王が提唱した「GNH(Gross National Happiness)」はGNP(=Gross National Product国内総生産)よりも大切だ。」という考え方からで、今のグローバリゼーションの影の問題や気候変動をはじめとする様々な環境問題を解く鍵が、ここにありそうです。日本が、今後進むべき方向は、単なるGNPの順位の追求ではなく、人と人、人と自然のつながりを大切にした心豊かな社会なのではないでしょうか。
故ロバート・ケネディが遺した言葉にも、すでに40年前からこのジレンマがありました。「アメリカは世界一のGNPを誇っているが、その中には、タバコや酒や薬、交通事故や犯罪や環境汚染や環境破壊にかかわる一切が含まれている。戦争で使われるナパーム弾も、核弾頭も、警察の装甲車もライフルもナイフも、子どもたちにおもちゃを売るために暴力を礼賛するテレビ番組も。
子どもたちの健康や教育の質の高さ、遊びの楽しさはGNPに含まれない。詩の美しさも、市民の知恵も、勇気も、誠実さも、慈悲深さも…。要するに国の富を測るはずのGNPからは、私たちの生きがいのすべてがすっぽり抜け落ちている」
経済活動量を単純に数値化しただけのGNPには、環境悪化や病気や災害など経済的外部効果も含まれ、生活の質や愛情など、お金に換算できない価値はまったく反映できないわけです。確かに高度経済成長をとげてきた日本は物質的にはとても豊かになりましたが、どこかで大切なものを置いてきぼりにして、幸せと違う方向に真っ逆さまに落ちているようです。
ブータンのGNHは、「持続可能で公平な社会開発」「自然環境の保護」「有形、無形文化財の保護」「良い統治」という4つの柱を中心に精神的な豊かさ、つまり幸福を目指そうという考え方ですが、この影響を受けてか、最近ではサルコジ仏大統領がパリのソルボンヌ大学で演説し、「現在のGDPは実際の経済発展レベルを示せないごまかしの指標にすぎず、新たな道具が必要だ」と主張したそうです。欧州連合(EU)でも「2010年中に新たな経済発展度測定指標を出したい」という発表がありました。金融危機後の世界で新たな価値の議論が急進展している背景から、日本でも、持続可能な社会を創る新しい幸福指数、言い換えれば、「笑顔の指標」、「心の豊かさの指標」が必要になってきているのではないでしょうか。
もし、今の延長線上ならば、いったいどんな未来になるのでしょうか。家族のつながりや企業内でのコミュニケーションも希薄となり、都会では地域社会も崩壊しつつあります。つながりのない社会の中、不安を抱えて生きる人が増え続けている現状は否めません。環境問題もこのままでは悪化の一途をたどり、近い将来、日本でも食料危機や水不足に遭遇するかもしれません。さらに、格差の問題や増え続ける医療費や介護費用など、社会不安は山積みです。どう考えても、未来社会の豊かな暮らしを子どもたちに約束できないはずです。
もちろん、今から私たちの行動を変えることができれば、未来は変えられるはずです。今までとは違う考え方で、社会システム、経済システムを見直し、心豊かな社会につながる選択をすれば、きっと明るい未来のシナリオが描けると私は信じています。2050年の時代に生きる子どもたちが近代史を学ぶときには、こんな内容が伝えられるかもしれません。「2010年を境にして、多くの人が社会の抱える問題を直視し、解決に向けた行動を市民と企業が起こし始めた。私たち人類は破滅の道を回避し、共生の道を選択したのである。そして、そのキーワードになったのは、CSR(企業の社会的信頼)である。」と。
現在、国家以上に社会に対して大きな力を持っていると言われるグローバル企業が本格的にCSRに取り組み始めれば、事態を大きく改善することもでき、幸せな社会に方向転換できる可能性があります。それほど、大きな意味を持っているのがこのCSRという概念でしょう。
「CSRを本業で進めることが、わが社のCSRです」あるいは、「企業理念の実践がCSRです」という企業が増えてきました。CSRの考え方も少しずつ定着し、初期段階の守りのCSRを経て、自社の価値創造のレベルにCSRの質も変化してきました。最終的に企業が目指すべき本質的CSRは、まさに「CSRを本業で進めること」ですが、この意味あいはかなり深く、実現もなかなか容易ではありません。クレアン流に言い換えれば、「次世代にも持続可能な企業であり続けるために、今の本業が持続可能なビジネスモデルなのかを見極め、環境や社会への負荷を最小限にするとともに、人々の幸せにつながる商品やサービスを生み出す企業にシフトすること」ここでの重要なキーワードは、「サステナビリティ(持続可能性)」です。
GNPを追い求めた結果、私たちの経済社会は、すでに「地球の限界」、「成長の限界」「人々の心の問題」に直面しています。けれども、きっと人間には、難問に挑戦する勇気と問題を解決する智恵や技術が備わっています。
私たち人間の共生意識を高めることで、「持続可能な社会」への転換を図る時期にきているとも言えるかもしれません。言い換えれば、一人ひとりの人間の集団である企業が、本業でその解決に向けて本気で取り組めば、幸せな未来に変えられるのです。その効果的な方法のひとつが「CSR」です。けれども、実際にはどれだけの企業が次世代のことを意識して事業活動を行っているのかというと、まだまだひと握りに過ぎません。多くの企業は、今日の売り上げや今期の利益を出さなければ競争に負けてしまうという状況の中で、自ずとそうした意識は希薄になりがちです。けれども、未来への投資をしなければ、企業力も弱まり、人財も育たずに企業として存続できないことを経営層は十分わかっているはずです。
従来の財務重視の短期的視点だけではなく、中長期的な視点による戦略的アプローチが経営に求められてきています。バックキャスティング経営といわれる「未来からの発想法」は、これからの変化の大きい時代に向けて、未来シナリオやビジョン策定に有効です。プロセスとしては、例えば2020年~2050年の未来にこうなりたいというあるべき理想の企業の姿(ゴール)を先に考え、そこを起点に今から何をすべきかのアクションプランを具体化していくという逆転の思考法です。先進的な海外企業の中では、こうしたバックキャスティングの発想を活用して中長期のビジョンを掲げるところも増えてきています。国内企業も2020年~2030年の中長期ビジョンや、さらに先の2050年の超長期ビジョンを策定し始め、ここ1~2年で30社近く増えました。策定した企業では、「2050年まで自社が存続することをトップが宣言した」ということも含め、社員のモチベーションも上がり、組織として活気づいているのが目に見えてわかります。企業は人で成り立っていますから、言い換えれば人財が生命線です。どのような企業を中長期的に目指すかの大きな方向性が決まれば、人財についても今後どのような人が必要なのかという採用戦略や教育研修の内容も決まってきます。なかでも未来思考ができる人財育成は重要になってくることでしょう。さらには、社会システムやビジネスモデルを変えていくようなイノベーションの方針も明確になってきています。これらは財務諸表には表れないものばかりですが、確実に将来の重要な企業価値につながってくるはずです。
企業と社会と地球のサステナビリティ(持続可能性)に向けて、本質的なCSRを進める時代になってきた今、クレアンに期待される役割がどんどん大きくなっていることを感じています。みんなが幸せだと感じられる社会創りのために、私たちも日々鋭意努力を重ね、本気で役割を果たしていきたいと考えています。
株式会社クレアン代表取締役
薗田 綾子