トライセクター・リーダー

2014-01-13 03:14 pm

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌に、「トライセクター・リーダー」に関する論文が掲載されています。トライセクター・リーダーとは、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を超えて活躍、協働するリーダーです。ハーバード・ケネディー・スクールのジョセフ・ナイ教授は、「トライセクター・アスリート」という言い方もしています。

CSVなど、企業が社会的課題に対応する取組みを推進する場合、政府、NGO/NPOなどとの協働が求められます。国内では、農業、医療、介護、教育、環境など様々な社会的課題に対応するために、今後、企業と政府が連携するケースは増えていくでしょう。海外においては、CSVのような取組みを推進するためには、政府だけでなく、NGO/NPOや国際機関などとの連携が不可欠です。こうした状況において、トライセクター・リーダーの重要性が増しています。

「トライセクター・リーダー」の論文では、コカ・コーラがインドで大量の水を使用しているとして政府、NGOの反発に遭い、清涼飲料水の製造を禁止されるという事態を受け、国務省やUSAIDなど公共での経験が豊富なジェフ・シーブライトを外部から招聘して責任者に据えて、水資源の持続可能な利用に向けた戦略を構築した例が紹介されています。シーブライトは、政府の環境関連部局でよく使われる地理情報システムを利用し、世界のコカ・コーラの工場の39%が水不足な深刻な地域に立地していることを明らかにし、鉱物・資源会社のリオティントに依頼し、コカ・コーラの20の事業部を対象とした水資源に関わるリスク分析を実施しました。そして、USAIDやWWFなどと水資源保全に向けた協働プロジェクトを推進しています。

最近では、日本でも、公務員から民間企業に転じる人、民間企業からNPOや社会起業家に転じる人も出てきています。しかし、政府、民間とも人材の流動性が低く、市民社会セクターが十分に発達していない日本では、まだまだセクター間を異動する人材は少ないのが現状です。

しかし、トライセクター・リーダーになるには、セクター間の垣根を超えて異動することが必須ではありません。しかし、他のセクターのことを理解して、適切に協働できることは必要です。それぞれのセクターの組織の求めるもの、意思決定の仕組み、強み/弱み、組織風土などを理解し、それに合わせることができることが求められます。そうしたトライセクター・リーダーとしてのセンスは、仕事、ボランティア、プライベートなどで、他のセクターの人々と交流、協働することを通じて、培われかも知れません。

ジョセフ・ナイ教授は、「トライセクター・リーダーは、いかなるセクターに属していても公共価値に寄与できる。セクターを移動しても、公共価値への貢献意欲を持ち続けるのだ」と言っていますが、トライセクター・リーダーの最も重要な要件は、「公共価値」創造への意欲かも知れません。株主価値の創造が求められる企業においても、「公共価値」の創造に貢献したいという意欲を持つ人材はいます。そうした人材をトライセクター・リーダーとして育成し、能力を発揮してもらうことが、これからは重要になるでしょう。株主価値と公共価値を両立させるCSV/シェアード・バリューは、そうした人材を育成し、能力を発揮する場を提供するでしょう。

(参考)

「トライセクター・リーダー:社会問題を解決する新たなキャリア」ニック・ラブグローブ、マシュー・トーマス著(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2014.2号)

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