マイケル・ポーターとサステナビリティ(Creating Shared Value)

2012-02-13 08:56 am

マイケル・ポーターは、業界内の優位なポジションを見出すことが、競争戦略の成功要因であるというポジショニング論を提唱し、競争における5つの力、バリューチェーンなど、基本的な経営フレームワークを提示し、現在最高の経営学者の一人に数えられます。

ポーターは、最近、現在の経済システムや企業活動のあり方に危機感を抱き、企業はもっと社会に対して価値を生み出せるはずと考え、企業価値と社会価値を両立する経営フレームワークである”Creating Shared Value(CSV)”を提唱しています。

本業を通じて社会に貢献することは、CSRの世界で、攻めのCSR、戦略的CSRなどとして言われてきたことですが、ポーターのCSVが優れているのは、バリューチェーン、クラスターといった従来提唱してきた理論を応用して、具体的に使える戦略コンセプトに落とし込んでいるところです。

ポーターの提唱するCSVには、大きく3つの方向性があります。

1つ目は、「社会課題を解決する製品・サービスの提供」です。これについては、GEのエコマジネーションやBOPビジネスなどに代表される、社会に役立つ事業をやりましょうという、従来言われてきた「攻めのCSR」とほぼ同じです。

しかし、気候変動、水・食糧資源の不足、高齢化、格差の顕在化など社会課題に対する関心が高まる中、自社の強みやリソースを活用してどのような社会課題に対応できるのかを考えることは、企業に新しい視点や気付きを与え、新市場の発掘、イノベーションの創出につながる可能性があります。

CSVの2つ目の方向性は、「バリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立」です

バリューチェーンが世界中に広がるにつれ、バリューチェーンと社会との関連性も広がっています。その結果、バリューチェーンと関連する社会課題が企業にとっての経済的コストとなるケースが増えてきており、その解決によりバリューチェーンを最適化・効率化し、企業競争力向上を生み出せる可能性は、大きくなっています。

ウォルマートが容器包装の簡素化・軽量化と輸送ルートの効率化を通じて環境負荷を軽減しつつ、2億ドルのコストを削減している例に見られるように、環境負荷が大きいことはバリューチェーンの非効率性を示しており、これを効率化することは、企業にとっても社会にとっても価値を生み出します。

また、ネスレが途上国の貧困地域のコーヒー農家を支援しつつ、限定された産地でしか入手できない高品質なコーヒー豆の安定調達を実現している例に見られるように、バリューチェーン上のサプライヤーが抱える社会課題を解決することにより、企業にとっても社会にとっても価値を生み出すといったことも可能です。

ポーターは、「バリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立」について、6つの方向性を提示していますが、詳細は、私の別コラムを参照頂ければと思います。

www.cre-en.jp/library/opinion/pdf/110220.pdf

business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110530/220295/?rt=nocnt

3つ目の方向性は、「事業展開地域のクラスター強化と地域への貢献の両立」です。

企業は単独で価値を生み出しているわけではなく、人材、インフラ、サプライヤー、規制や事業慣行、あるいは水などの自然資源等、様々なものに支えられ影響を受けています。こうした企業の活動を支える基盤をクラスターと呼びますが、こうしたクラスターは、地域社会の発展と密接に関連しており、クラスターを強化することで、企業にとっても社会にとっても価値を生み出すことができます。

マイクロソフト、シスコ、デルなどは、事業展開地域でのIT教育に力を入れていますが、こうした活動は地域の発展を促すとともに、不足しがちなIT人材を育成することを通じて自社のクラスターも強化しています。

このように、「社会課題の事業機会化」「バリューチェーン全体を俯瞰した社会課題への対応による生産性の向上」「クラスターの整理と社会課題解決を通じたその強化」といったポーターが提唱するCSVの方向性は、企業の競争力強化に向けて検討する価値のあるものです。

個人的には、企業が社会価値を生み出すという新しい資本主義に向かうメガトレンドがある中、CSVに本格的に取り組む企業こそが、新たな時代の勝ち組となる可能性が高いと考えています。

(参考)

「共通価値の戦略」(ハーバードビジネスレビュー2011.6)

「競争優位のCSR戦略」(ハーバードビジネスレビュー2008.1)

CSV戦略ポテンシャル診断サービス
「CSV戦略ポテンシャル診断」サービスページ

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