ウォルマートの変身とサプライチェーンへの影響

2012-02-20 08:41 am

ウォルマートは、EDLP(Every Day, Low Price)という低価格、徹底したコスト管理、効率的な物流戦略を武器に、小規模商店や地元資本の小規模スーパーマーケットしか存在しないような小都市への進出を中心に急速に成長し、売上高で世界最大の企業となりました。

低価格、低コストを武器とするウォルマートは、最近までCSRに熱心な企業ではありませんでした。従業員の労働条件は悪いことで有名で、低賃金の非正規従業員を多用し、正社員としての採用に消極的な上、健康保険の付与や労働組合の結成を認めてきませんでした。また、中国製を中心とする安価な輸入品を多く販売しており、海外の調達先では、人権侵害にあたる労働環境、搾取が行われていると批判されました。

こうした自社の成長本位の姿勢は、近年批判を浴びるようになり、ウォルマートが進出すると、町の商店街とコミュニティが崩壊すると考え、ウォルマートの出店に反対する地域が増えた結果、1996年に、店舗数はピークを迎えた後、減少に転じています。

ウォルマートは、従業員やサプライチェーンに加え、環境への悪影響でも批判されるようになり、ウォルマートに対する抗議キャンペーンが起こり、様々な問題がドキュメンタリー映画で紹介されるなどした結果、1998-2000年の新規出店計画の3分の1が抗議運動の対象となり、その3分の2は地元の反対により出店中止となりました。また、ノルウェー政府年金基金が、ウォルマートは“人権と労働権の重大にして組織的な侵害”をしているとして、投資を禁止するなどもあり、企業価値は大きく減少しました。

こうした状況を踏まえ、ウォルマートは、地域住民、サプライヤー、NGOなどのステークホルダーとの対話を繰り返した上で、もはやこれまでのやり方はサステナブルでないとして、2004年以降、ビジネスのやり方を大きく見直しました。サステナビリティに配慮したサステナブルな企業に生まれ変わるため、7年以内にウォルマートの温室効果ガス排出量を20%削減することを約束し、従業員への健康保険手当の付与、最低賃金の引き上げを行いました。さらに、サプライヤーに対して商品の環境への影響を測る15の質問を行い、これに答えない場合は、取引関係が薄れる可能性があるとしました。

最近では、従業員への教育、温室効果ガス削減に加え、地域農産品調達、零細企業活用、農家支援、全米の飢餓削減支援など、10のサステナビリティに関するプロジェクトを進めたりしています。

特に影響の大きいのは、10万とも言われる全世界のサプライヤーを環境・社会視点で評価する「サステナブル商品インデックス」の開発を進めていることで、これは、サプライチェーンに大きな影響を与えます。日本企業でも、ウォルマートの動きをきっかけとして、CSRを本格化させている企業が出てきています。

ウォルマートは、自社の評判の悪化を受け、そのダメージを最小化するためにサステナビリティを重視する企業への変身を図りました。評判については、ハリケーンなどへの自然災害への対応について準備を行ってきたことが、2005年のハリケーン・カトリーナへの対応に生かされ、救援物資の効率的な供給などを通じて賞賛されたことなどもあり、回復してきています。

しかし、このウォルマートの変身は、ウォルマート自身の評判の問題を超えて、世界中のサプライヤーに影響を及ぼしています。サプライチェーンが世界中に広がった現在では、他国の世論の変化が、ウォルマートのような流通やB to C企業を介して、日本企業にも影響を及ぼします。国内の企業も世界の動きと無縁ではいられない社会になっているのです。

(参考)

「『評判』はマネジメントせよ」ダニエル・ディアマイアー(2011年、阪急コミュニケーションズ)

walmartwatch.com/wp-content/blogs.dir/2/files/pdf/21st_Century_Leadership.pdf

www.forbes.com/sites/sap/2011/08/16/wal-mart-top-10-sustainability-projects-underscore-global-leadership/

walmartstores.com/Sustainability/9292.aspx

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