政府の役割を企業が担う:トヨタ、タニタの事例

2014-12-25 09:05 am

CSVの基本的な方向性の一つは、「これまで政府の役割と考えられてきた領域に企業が進出する」ことです。これに関して、最近面白いと思った事例を2つ紹介します。

1つ目の事例は、トヨタによるインドネシアの渋滞対策です。インドネシアでは、都市部の渋滞がひどく、経済成長の足かせとなり、自動車販売の妨げにもなることが懸念されています。また、トヨタの工場とジャカルタの港の間で、部品や完成車の運搬時間は、現在2時間半程度ですが、渋滞が改善されないと2020年には9時間となる試算もあり、自社のオペレーション上も渋滞は課題となっています。トヨタは、この渋滞問題の解決に取り組んでいます。

トヨタは、日本政府と連携し、関連の現地法人企業23社と共に交差点の改良工事に乗り出しました。その工事は至ってシンプルで、交差点の手前にUターン専用レーンを置き、渋滞の原因になりやすいUターンや脇道からの合流による影響を和らげました。その費用は、約1,500万円です。この結果、交差点の車列の長さは、平均65メートルから15メートルへ77%改善しました。

これは自社の売上や競争力に影響する渋滞の問題を、政府任せにするのではなく自ら解決し、売上や競争力を維持するというCSVです。こうした基本的に政府が行うものと考えられているインフラの整備・改善について、自社の競争力にかかわるものは自ら行う企業も増えています。ヒューレット・パッカードは、中国で鉄道を整備していますし、世界最大の無機肥料メーカーのヤラ・インターナショナルは、アフリカで港湾や道路を整備しています。

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2つ目の事例は、タニタが板橋区と連携して行う、区民の健康づくりを推進する事業です。

タニタが通信機能を備えた歩数計約1,000個を区民に配布し、体重や体脂肪率などを測る体組成計と全自動の血圧計を区内の商店街やスポーツ施設など10ヵ所に設置します。利用者が歩数計をかざして計ると、データがタニタのサーバーに自動的に送られ、同社のサイト「板橋からだカルテ」で健康状態の推移を見ることができる仕組みです。サイトでは、健康づくりに役立つコーナーなども設けています。また、タニタは、「タニタ食堂」のノウハウを生かし、商店街の飲食店と共同で、区内産の食材を使ったヘルシーメニューの開発にも取り組み予定です。さらに、食生活や運動習慣についてのセミナー、「板橋Cityマラソン」などの運動大会との連携も実施する予定です。

住民の健康づくりの政策も、これまでは政府の役割と考えられていましたが、タニタは、そこに事業機会を見出しています。自治体と連携して、自治体の役割を一部企業が担う取り組みとしては、他にも、カルチュア・コンビニエンス・クラブによる武雄市図書館の運営、ヤマト運輸が宅急便のネットワークを活用して高齢者の買い物代行や見守りなどの地域住民の生活支援などを行う「プロジェクトG」など、いろいろあります。

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1つ目の事例と2つ目の事例の文脈は異なりますが、「これまで政府の役割と考えられてきた領域への企業の進出」には、多様な機会があります。自社の経営課題に照らして、どのようなビジネス環境整備ができるか、自社の強みに照らして、どのような政府の抱える課題に対応できるかを考えてみると、いろいろな可能性が見えてくるでしょう。

(参考)

「東南ア、企業も渋滞対策」日本経済新聞(2014年12月17日)

「板橋区、タニタと連携」日本経済新聞(2014年12月16日)

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