「需要創造のCSV」のベストプラクティス:ヤマハ音楽教室

2015-01-19 09:11 am

日本におけるCSVを通じた市場創造のベストプラクティスとして、ヤマハ音楽教室があります。子どもの頃から感性を育み音楽に親しむ教室を展開し、楽器を演奏する人を増やし、それが楽器の市場を広げていくというものです。ヤマハは、それに加え、素人が自作自演の曲でプロとなる道を拓いたポピュラーソングコンテストを開催し、演奏や作曲を身近なものとしました。手軽に購入できる楽器と音楽教室、コンテストで、「趣味としての楽器演奏」の市場を広げています。この、音楽教室を普及しながら楽器マーケットを広げて行くというビジネスモデルは、グローバルでも普遍的に機能し、現在は、世界40カ国以上に広がっています

ヤマハ音楽教室は、大前研一氏に、「戦後日本の経営者の中でもっとも個人能力が高かった」と言わしめるヤマハ第4代目社長、ヤマハ発動機創業者の川上源一氏が、開発し広めたものです。ヤマハ音楽教室が始まった1954年頃は、日本の初等教育における音楽学習は確立されておらず、音楽教室は、優れた音楽家を幼少期から養成することを目的としたものでした。川上源一氏は、欧米視察を通じて、欧米では人々が音楽を身近なものと感じており、心から楽しんでいることに強い感銘を受け、日本でも誰もが気軽に楽器を手に取り、演奏活動を楽しむことができるような社会を創りたいと考えました。そして、ヤマハ音楽教室を開講しました。

しかし、「音楽を自由に楽しむことのできる人を育てる」という理想の実現を目指す音楽教室を普及させるには、教え方、場所、教える人といった基盤を整備することが必要でした。教え方については、楽器に初めて触れる子どもが楽しみながら学習を続けられるよう、「きく」「うたう」「ひく」「よむ」「つくる」の5要素を生徒の発達段階や理解力に応じて組み合わせるメソッドを開発し、当時としては画期的なグループレッスン形式の授業を展開しました。場所については、幼稚園を会場とし、幼稚園が楽器を購入し、毎月のレッスン料から楽器代金を分割払いする手法を開発しました。これにより、幼稚園は、午後の空き時間に教室を貸し出すだけで、楽器を手に入れることができました。教える人については、音楽大学出身者に標準化された教育方法を身に付けてもらうほか、財団法人ヤマハ音楽振興会を通じた育成、音楽能力検定の実施などを通じて、質の高い講師を増やしていきました。

ヤマハの代表的製品であるピアノについては、赤ちゃんが生まれたときに、「おめでとうございます。今から毎月1,000円ずつ貯金すると、ちょうどいいお年頃にピアノが買える金額となります」と親を口説いて、ピアノ貯金を積み立ててもらうなどしました。4歳から音楽教室に通ってもらい、10歳にピアノを買うという、音楽教室と楽器の販売をつなげたビジネスモデルによって、音楽教育の大切さ、豊かさを啓蒙して、楽器の市場を創造しました。結果、ピアノについては、日本の家庭のピアノ普及率は20%となり、本場のドイツやアメリカを抜いて世界一になりました。

CSVの中でも注目される「需要創造のCSV」として、日本が誇る優れた事例です。

(参考)

koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00027&age=high-growth&page=keii

president.jp/articles/-/7777

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