長期的投資に対する説明責任

2015-03-02 09:07 am

公益資本主義を提唱する原丈治氏がコラムで、米デュポンCEO(当時)のチャールズ・ホリデー氏に「東レのように炭素繊維事業を続けてはどうか」と勧めたところ、「炭素繊維事業は45年間(当時)も赤字が続いている。もしCEOである私がそんな事業に投資し続けたいなどと主張すれば、株価は下がり、株主は取締役全員を解任するだろう」という答えが返ってきたと書いています。株主のガバナンスが効いた企業において、長期視点での投資が如何に難しいかを示しています。

炭素繊維について言えば、東レが米ボーイングから新型機の主翼向けに1兆円の受注を獲得するなど、事業化に成功し、世界をリードしています。しかし、東レにおいても、長期間赤字が続いていた炭素繊維事業については、何度も経営会議で撤退が議論されていたようです。しかし経営会議では、常に最終的に「炭素繊維が実用化できたら、世の中を変えることができる」「保有する技術をもとに、次世代につながることができる」として、継続を決定してきました。そして、1950年代から長期間に亘り粘り強く研究開発を続けた結果、鉄に比べ4分の1の軽さながら、10倍以上の強度を持つ夢の技術の事業化に成功しました。

また、「CSV経営」にも書いていますが、シャープでは、創業者早川徳次の「無限にある太陽の光で電気を起こすことを工夫すれば、人類にとってどれだけ寄与するか、はかりしれないものがある」という強い想いが伝承され、1950年代からなかなか市場が立ち上がらない中、研究開発が続けられ、太陽光パネルを実用化しました。

その他、燃料電池車などの例もありますし、現在も東芝やパナソニックが人工光合成に挑戦するなど、社会に大きく貢献する研究開発を長期的視座で続けるというのは、日本企業の特長と言えます。事業的には、成功するケースもそうでないケースもありますが、こうした研究開発は、人類の進歩には大きく貢献します。

こうした長期的研究は、企業ではなく、大学や国の研究機関が中心となって行うべきという考えもありますが、企業だからこそ出来ることも多くあるでしょう。CSVの観点から、社会的課題の動向を捉えつつ戦略性を持って取り組むことで、成功する可能性を高めて欲しいところです。そうすることで、ステークホルダーへの説明もしやすくなるでしょう。

日本企業では、株主のガバナンスの弱さが利益率の低さにつながっているとして、コーポレートガバナンス・コードの導入など、ガバナンス強化の動きが進められています。これまで以上に、長期的投資に対する説明責任が必要となってくるでしょう。最近潮流となっている統合報告においても、長期的投資に対する経営の考え方をうまく伝え、株主の理解を得ることが必要です。株主のガバナンスが強くなっても、説明責任を果たしつつ、日本企業の良さである「社会に大きく貢献する」長期的研究開発は、続けて欲しいものです。

(参考)

business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150218/277694/?rt=nocnt

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