「技術の将来性は社会的価値で判断する」:東レ

2015-09-14 08:54 am

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載されている東レの日覺社長のインタビューがCSV視点でも興味深かったので、ご紹介します。

東レについては、ずっと赤字が続いていた炭素繊維事業を半世紀近くかけて軌道に乗せ、社会価値を生み出した長期的な取り組みは、「日本型CSV」の典型例だと考えています。

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今回のインタビューで、日覺社長は、事業・技術の将来性について、「収益を上げていない事業が必ずしも将来性がないわけではない。」「将来性は、収益化までのスピードというより、社会的価値の有無だと考えている。」「世の中の動きや方向性に合致してさえいれば、将来的には市場で成功する確率は非常に高いと判断する。社会的に価値があるものには、必ず市場があるはずだと信じる。」と言っています。こうした考え方が、炭素繊維事業の長期的な取り組みを可能としたのでしょう。

この「社会的に価値があるものには、必ず市場がある。」というのは、CSVの基本思想でもあります。CSVの場合は、市場の啓発やルール作りなど積極的な市場創造も行っていくので、「社会的に価値があるものは、必ず市場を創り出せる」という言い方のほうがいいかも知れませんが。

炭素繊維については、「将来的には化石資源が枯渇し、エネルギーコストが上がると言われている。そのような中、航空機や自動車の燃費を考えると、機体や車両の軽量化は必須条件と考えられる。炭素繊維のような軽量で強度のある素材ができれば、世の中が変わるという確信はあった」としています。長期的な視点でCSV事業を生み出していくには、こうした社会の動きへの洞察は不可欠です。

しかし、東レは、炭素繊維が将来的には、航空機などに使われる可能性があったとしても、安全性などを重視し、材料変更に慎重な航空機メーカーが炭素繊維を採用するには時間がかかることも、理解していました。そこで東レでは、短期的には、規模は小さくても収益を上げながら技術を磨いていくために、軽くて強く、弾性率が高いという炭素繊維の特性を活かして、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレーム、釣り竿などの用途を開拓し、それらを通じて、着々と技術を磨いていきました。長期的なCSVを成功させるためには、短期の収益化も併せて目指してくという姿勢は重要でしょう。

日覺社長のインタビューでは、また、ユニクロとのパートナーシップが成功した理由を、「世界を変える」というビジョンを共有していることとしています。「社会的価値で将来性を判断する」「長期的な価値創造のために、小さな成功を積み重ねる」「ビジョンを共有するパートナーシップを構築する」などは、日本型CSV成功のために必要な考え方だと思います。

(参考)

「東レ:市場は後からついてくる」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2015年10月号)

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