IBMとエコシステムの強化

2012-03-08 09:02 am

前回に続いて、ロザベス・モス・カンター教授の登場です。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=202

カンター教授は、最新のHarvard Business Review誌で”Enriching the Ecosystem”という論文を発表しています。

テーマとなっている“エコシステム”は、同じハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授の提唱するクラスターとも近い概念で、特定の業界に関連する企業、大学、研究機関、政府機関などが協調し相互に依存しつつ業界を発展させていく状態となっていることを言います。

上記論文では、エコシステムの構築について、4つの目的に沿って、様々な事例をあげながら説明していますが、ここでは、エコシステムを「結び付き」の場と捉え、IBMの事例を用いてシンプルに纏めてみます。

第一の目的「アイデアと企業の結び付き」

大学や研究機関、ベンチャー企業の持つアイデアを、事業化のノウハウとリソースを持つ大企業と結びつけ具体化するエコシステムを構築します。

IBMは、社会貢献活動として世界の都市の課題を解決する”Smarter Cities Challenge”というプログラムを米国のミルウォーキーで展開。アクアポニックスという、魚の養殖と野菜の水耕栽培を一体化させ、魚の排泄物などを野菜の栄養分とする環境循環型の食糧生産システムに関し、大学などの研究機関や企業の持つ技術を結び付け、その発展と実現を促進する場としてのイノベーションセンターの設立を提案しています。

第二の目的「中小企業と大企業の結び付き」

中小企業にとって、大企業のサプライヤーとなることは、事業の安定と成長のために非常に大きな意味を持ちます。また、大企業にとっても、新しい中小企業との結び付きは、新しい価値を生み出すことにつながります。特にサプライチェーンがグローバルに広がりがちな現代では、国内中小企業が育てば、ロジスティクスを簡素化でき、リスクやコストの削減につながります。こうした、中小企業と大企業をうまく結び付けるエコシステムを構築します。

IBMは、中小企業と大企業を結びつけるための大きな障害が情報の共有であるとして、”Supplier Connection”という中小企業と大企業を結び付けるためのポータルサイトを構築しました。これに、大企業として、ファイザー、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、AT&T、キャタピラー、DELLなどが参加し、国内中小企業との新しい関係構築が促進されています。

第三の目的「教育と就労機会の結び付き」

企業にとって、スキルを持った人材は、成長と価値創出のために極めて重要なリソースです。企業が必要とするスキルを、人々が身に付けられるエコシステムを構築します。

IBMは、米国では、大学以下のミドル・スキルの教育に課題があるとして、ニューヨーク市などと協力して、”Pathways in Technology Early College High School(P-TECH)”という、職業スキルを身に付けることにフォーカスした、6年制の「ハイテク高校」を開設しています。IBMは、P-TECHでの教育を支援するとともに、卒業生に優先的にIBMに就職する機会を提供しています。

第四の目的「セクター横断でのリーダーの結び付き」

地域の発展に向けた戦略を構築し、投資を惹きつけ実践していくために、企業、政府、教育機関、NPOなどのリーダーがセクターを横断して協働するエコシステムを構築します。

こうした地域の発展につながるエコシステムを企業が主導して創り上げることもできます。

上記のようなエコシステムは、企業の競争基盤として非常に重要です。本ブログでも紹介しているマイケル・ポーターが提唱するCSV(クリエイティング・シェアード・バリュー)の3つの方向性の1つである「事業展開地域のクラスター強化と地域への貢献の両立」とも共通しますが、企業の競争基盤としてのエコシステムの構築・強化は、企業の競争力を強化し企業にとっての価値を生み出すとともに、社会にとっての価値も生み出します。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

IBMなどは、長期的な競争力強化のため、競争基盤としてのエコシステム構築に力を入れています。日本企業が短期的な利益を超え、より広い視点で経営環境を捉えて競争基盤の強化などに目を向けなければ、世界の企業との差は開く一方かもしれません。

(参考)

“Enriching the Ecosystem” by Rosabeth Moss Kanter, March 2012 issue of Harvard Business Review

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