CSV専門組織は必要か?

2015-11-26 09:01 am

キリンが2003年1月にCSV本部およびCSV推進部を設立して以降、少しずつではありますが、CSV専門組織を立ち上げる企業が出てきています。CSV専門組織設置のパターンとしては、キリンのCSV推進部がそうですが、CSR組織から改編される場合と、CSRとは別の組織として設置される場合があります。

現在のところ、CSVに関心を持って良く勉強しているのは、CSR部門の人たちが中心です。本来CSVを中心的に推進すべき経営層、経営企画、事業部門、研究開発等の人たちについては、CSVという考え方があるということを聞いたことがあるという人は、それなりにいるかも知れませんが、そうした人たちの多くは、「事業を通じて社会に貢献する」「社会貢献とビジネスを融合させる」くらいの大雑把な理解で、CSVをしっかり勉強している人は、非常に少ないと思います。

結果として、現在、多くの日本企業で、CSV推進の役割は、CSR組織が担っています。一部企業では、CSR組織を中心として、マネジメントや事業部門、研究開発部門向けにCSVの講義を開催したり、CSVワークショップを開催したりしていますが、実際の活動につなげている例は、極めて限られます。CSR部門が事業部門などと連携し、自社製品を生かして、途上国の健康や教育問題の解決に取り組んでいる味の素、リコーなどの例もありますが、数えるほどしかありません。

CSR部門がCSVを推進するという役割をひっくり返して、CSV部門がCSRも推進するようにするのが、CSR部門をCSV部門に改組するというやり方です。キリンの様子を伺っている限りは、CSVという共通言語、考え方が社内に広まることにより、CSV部門とマーケティング部門等との連携がかなり進むようになっているようです。キリンでは、実際のCSVの取り組みも増えつつあり、CSVを進めようとするのであれば、CSRをCSVと名前を変えるのは、効果があるようです。

一方、CSRとは別にCSV組織を設置する企業もあります。しかし、今のところ、CSV専門組織のミッションは、CSV全般を推進するというよりは、戦略的社会貢献活動を進めるといったところが多いようです。戦略的社会貢献だけであれば、よほど大規模に進めるものでなければ、社内外に与えるインパクトも限定的です。実際CSV専門組織を作ったものの、短期間でなくしてしまった企業もあります。

また、CSVとは言わずに、事業を通じて社会問題に取り組む組織を設置するケースもあります。日立の社会イノベーション事業本部などが代表例です。製品・サービスのCSVだけであれば、こうした組織は十分機能するでしょう。しかし、バリューチェーンやビジネス環境(クラスター)のCSVを併せて推進して市場を創造するためには、CSVという名を冠したほうが効果的だと思います。

結論としては、CSVの理解浸透を進め、実際のCSV活動を推進していくためには、CSVという名を冠した組織の設置は有効だと思います。しかし、入り口でCSVの理解が戦略的社会貢献となってしまっては、逆効果です。CSV専門組織の設置にあたっては、製品・サービス、バリューチェーン、ビジネス環境の3つのCSVとその統合的推進による市場創造など、CSVをしっかり理解した上で、できれば全社的なCSV戦略にもとづいて、それを実現するミッションを持つ組織として、設置するのが良いと思います。

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