栄養改善事業支援プラットフォーム

2016-03-14 01:02 pm

政府と食品大手は、アフリカなど途上国の食品市場を開拓するため、今夏に官民の新組織を発足させるとのことです。新組織は、「栄養改善事業支援プラットフォーム(仮称)」で、政府側は、内閣官房の健康・医療戦略室と農林水産省が中心となり、JICA、ジェトロが参加、企業側は、味の素、明治、キューピー、日清食品ホールディングス、大塚製薬などが参加するとのことです。このほか、地方の中堅企業にも参加を呼びかけ、現地での流通網の構築や資金面での協力を求めて、商社や投資ファンドの参加も想定しているとのことです。

開拓を目指す市場や商品ごとに、連携組織をつくり、現地の最新情報を提供し、商品開発を支援する予定で、JICAなどが現地の流通・小売りとの仲介や、現地生産や輸出、販売の許認可などの調整を支援し、ODAとの連携も検討するとのことです。

「栄養改善事業支援プラットフォーム(仮称)」については、本年8月に安倍首相が出席してケニアで開催されるアフリカ開発会議(TICAD)にて発表予定で、本年中にアフリカと東南アジアで立ち上げたい考えとのことです。安くて安全で栄養価の高い食品を提供するため、現地の食材を使った食品の現地生産や、栄養状態を改善するサプリメント商品などを念頭に置いているようです。

ペプシコが、現地の「好み」に合わせて、インドでトウモロコシではなく、レンズ豆を原料としたスナック菓子を開発し、成功している事例、ネスレが、1日あたりの所得が10ドルに満たない世界の28億人の人々に、手ごろな価値の製品を届けるため、「手の届く価格帯の製品群(Popularity Positioned Products-PPPs)」を開発・販売している事例、ダノンが「グラミン・ダノン」を通じて、貧困国の栄養不足を解消するために、ビタミンなどの栄養素が豊富で、子供にとって食べやすく、貧しい人々でも買えるヨーグルトを提供している事例などがイメージに近いでしょうか。味の素がガーナで子どもの栄養不足の問題を、現地の離乳食にアミノ酸技術を活かして栄養素を付加した商品を展開することで解決しようとしている「ガーナ栄養改善プロジェクト」もイメージが近いかも知れません。これらは、純粋にビジネスとして展開している事例、将来の市場開拓につなげるために短期的には社会貢献とした対応している事例、そもそも収益追求ではないソーシャル・ビジネスとして展開している事例など、いろいろあります。

「栄養改善事業支援プラットフォーム(仮称)」は、昨年から、JICAと食品産業センター(JFIA)が中心となって設立を目指した動きを進めてきたものです。背景には、日本政府が、2013年に英国政府のイニシアティブで作成された「Global Nutrition for Growth Compact」において、栄養改善に向けた官民連携パートナーシップを先導することを約束し、また同国やブラジルとの間で、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けて世界的な栄養改善の取組みを強化することを確認したことがあります。これに、今回、農産品や食品の輸出拡大を成長戦略と位置づける内閣や農水省が乗ってきたものでしょう。そういう意味では、国際的な栄養不良問題を、ビジネスを通じて持続可能な形で解決し、日本の農業や日本企業を発展させるというCSVが狙いにあると言っていいでしょう。

こうした官民連携の組織が機能するためには、まずは、複数の省庁が関わる政府側のコーディネーションが適切に行われる必要があります。途上国ビジネスに知見があり、かつ役所の仕事のやり方も理解して省庁間の調整ができる、マルチセクター・リーダーが中心となって、全体をコーディネーションしていく必要があるでしょう。

企業側は、既に途上国ビジネスの経験があり、単独でもビジネスを推進できる企業にとっては、政府との調整や資金的な支援等にあたって活用できるところは活用していくくらいになるかも知れません。一方、途上国ビジネスはこれからという企業にとっては、途上国ビジネスのプロジェクトを立ち上げる良い機会になると思います。

途上国市場を開拓するにあたっては、バリューチェーンの構築やビジネス環境の整備などCSVの考え方が有効ですので、「栄養改善事業支援プラットフォーム(仮称)」においても、CSVの考え方を適切に取り入れつつ、組織を機能化させて、日本企業、現地社会の両方に価値を生み出す取り組みとして頂ければと期待します。

(参考)

日本経済新聞(夕刊)2016年3月9日(水)

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