CSVが社内外を紡いだシチズンのエシカルウオッチ”CITIZEN L Ambiluna ”誕生ストーリー

2016-05-11 08:35 pm

シチズンが、レディスウオッチブランドとしてグローバルに展開している”CITIZEN L”の新たなコレクション”CITIZEN L Ambiluna”を発表しました。今秋に発売予定です。そのコンセプトが画期的だったため、早速取材に行きました。何が画期的かというと、”Beauty is Beauty”「美しいものは美しいマインドから生まれる。内側の美が外側を輝かせる。」というブランドコンセプトをエシカルウオッチとして体現しているところです。時計材料を化学物質まで明らかにするために製品成分表を公開し、時計のライフサイクルでのCO2排出量を公開し、材料に使用する紛争鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)が、コンゴ民主共和国およびその周辺国における違法な採掘によるものでない「DRCコンフリクトフリー」を宣言しています。

シチズンでは、2014年末から2015年初めにかけて5回シリーズでCSVセミナーの講師をさせて頂いたのですが、このCSVセミナーもエシカルウオッチ誕生に貢献していたようです。”CITIZEN L”は、以下のようにして誕生しました。

2014年の夏、”Beauty is Beauty”をコンセプトとするCITIZEN Lの新しいブランド提案を考えていた商品企画担当の櫻井さんと宮川さんは、「美しいとはどういうことか?」「美しい女優は?」「美しいとイメージする女優には何か共通点があるような気がする」と考えていました。しかし、時計のデザイン要素以外で美しさを表現する方法については良いアイデアがありませんでした。

そんな時、幼少時代にガールスカウトの経験のある宮川さんの前を、たまたま国連Tシャツを着ていたCSR担当の山田さんが通りかかりました。少し前に櫻井さんはCSR報告書の取材を受けて面識がありましたが、国連Tシャツに臭いを感じた2人は、山田さんと意気投合し国際社会の状況やCSVという考え方を初めて知ることになりました。

山田さんは、以前から、シチズンは社名の持つ意味や企業理念からCSVの概念が合う会社だと感じていました。数年前から、シチズンでCSVを推進することが必要と考え、自身も別の女性用腕時計ブランド“クロスシー(xC)”で、Because I am a Girlキャンペーンを支援するコーズマーケティングを時計事業部へ提案し実現していた山田さんは、気候変動、紛争鉱物などの社会課題や他社の取り組み事例に関する情報を提供しました。ここで、商品企画とCSRのコラボレーションが生まれました。

商品企画とCSRの3人のコラボレーション議論の中から、製品成分表公開、ライフサイクルでのCO2排出量公開、紛争鉱物フリーなどのアイデアが出てきました。ここで、営業、商品企画、開発を経験し、社内に人脈のある山田さんが、「環境に福嶋さんというプロがいるので相談してみよう」と提案し、福嶋さんに相談することになりました。一方の福嶋さんは、環境の責任者となって5年の間に、世界中の環境法令に対応できるようシチズン製品の含有化学物質管理のデータベースを構築していました。

3人の話を聞いた福嶋さんは、データベースの蓄積があるため、製品成分表の公開は、ほぼ問題なくできるだろうと考えました。また、CO2排出量の公開については、一部生産担当の協力があれば、産業環境管理協会のカーボンフットプリントコミュニケーションプログラム(CFPプログラム)に基づく対応が可能と考えましたが、ちょうど、日本時計協会でCFPプログラムに必要なCFP-PCR(製品種別基準)が固まったところでした。早速、CFPプログラムにエントリーし、時計として初めての認定を受けることにしました。紛争鉱物フリーについても、含有化学物質管理データベースで、紛争鉱物のサプライヤーを把握することができたため、DRCコンフリクトフリーの宣言が可能となりました。

こうした商品の「内側の美しさ」の追求と並行して、CTIZEN Lの外側=デザインの美しさの追及も進められました。これについても、エシカルウオッチというコンセプトであることから、CSR関係の伝手で、エシカルファッションの普及を進めるファッションジャーナリストの生駒芳子さんを紹介して頂き、生駒さんから従来のファッションとは違う視点での特別なデザインが出来る人として、建築家の藤本壮介さんを紹介していただきました。生駒さん、藤本さんも、エシカルウオッチというコンセプトに共感して協力して頂けることになりました。藤本さんからは、2014年末に、「時間は見えないものだが感じることができる。光も形はもたないが、その揺らぎに時を感じることができる。光の揺らぎを形にして時を感じられるような時計にしたい」とのアイデアが出されました。シチズンの技術の人たちも、最初は聞いたこともないデザインコンセプトに戸惑いがあったかもしれませんが、藤本さんのアイデアに技術者としての誇りを刺激され、3回のプロトタイプを経て、CITIZEN L Ambilunaのデザインが創り上げられました。なお、生駒さんの紹介で、西陣織の細尾、漆の坂本乙造商店などの協力を得て、日本の伝統文化のテイストも織り込んでいます。

こうして商品の外側の内側の美しさを追求する一方で、社内的には、特に商品の内側の美しさ、製品成分表公開、ライフサイクルでのCO2排出量公開、紛争鉱物フリーといったものに対する理解を得る必要がありました。そこでCSR担当の山田さんは、社内で商品を通じた社会課題への対応=CSVという考え方を広げるべく、CSVの専門家(水上)に、社内向けCSVセミナーの実施を依頼しました。CSVセミナーでは、一般的なCSV概論に加え、シチズンおよび競合等のCSV事例を共有し、シチズンで今後どのようなCSVを実施すべきかについてのグループディスカッションを実施して、具体的なイメージを持ってCSVを浸透しました。

CSVの考え方を浸透させることにより、エシカルウオッチのコンセプトが分からないという第1ハードルをクリアし、また、環境側の尽力で生産側の負担を軽減することにより、取り組みが大変という第2のハードルをクリアしました。そして、本年3月17日に、CITIZEN L Ambilunaは、世界最大の宝飾と時計の見本市バーゼル・フェアで発表されました。

改めてお話を伺ってみると、様々なタイミングや戦略的仕掛けなどもありましたが、シチズン社内での商品企画、CSR、環境のコラボレーション、社外の生駒さん、藤本さんらとのコラボレーションが、CITIZEN L Ambiluna誕生の最大のカギであったと思います。そしてそれを紡いだのが、商品を通じて社会課題に対応するCSVというコンセプトです。CITIZEN L Ambilunaの成功が、「市民に愛され市民に貢献する」企業であるシチズンが、さらにCSVを推進することにつながり、それが多くの企業でのCSV推進につながることを期待します。

(参考)

citizen.jp/l/special/index.html

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