「日陰戦略」「裏張り」としてのCSV

2016-05-30 08:20 am

一橋大の楠木建教授が日経「経済教室」で、面白いことを書いていました。旬の事業機会である「日向」は競争が激しいので、「日向」が生み出す「日陰」を攻めるべきだ、そのほうがユニークな価値を創造できる可能性がある、というのです。

競争戦略の本質は競合他社との違いをつくることにあります。同時に、その「違い」は長期利益をもたらす「良いこと」である必要があります。しかし、そんなに「良いこと」であれは、他の誰かが手を付けている可能性が高い。魅力的なブルーオーシャンを見つけ出すのは、簡単ではありません。つい、フィンテック、IoTなど流行の事業機会に飛びつきがちになります。

楠木教授は、そうした流行の事業機会を「日向」と呼んでいます。そして、「日向」が生まれるとそこには同時に「日陰」が生まれるとしています。日向戦略は、新しい技術や市場の機会をとらえて顧客の問題を解決しようとします。しかし問題解決(日向)は常に新しい問題(日陰)を生み出します。日陰戦略は、「問題解決が生み出す問題の解決」に軸足を置きます。ここは、競合企業が魅力を感じていない事業機会であり、ユニークな価値を創造できる可能性があります。楠木教授は、これを「逆張り」ならぬ「裏張り」であるとも言っています。

CSVは、元来「日陰戦略」の性質を持っています。現在顕在化している社会・環境問題は、経済成長、豊かさの追求の「日陰」として発生しているものです。「日向」としての物質的な豊かさの追求が、大量の資源・エネルギーを消費し、大量の物質を排出・廃棄し、「日陰」としての環境問題を生み出しています。また、「日向」としてのグローバル化、IT化、金融革命が、格差、開発に関わる問題などを生み出しています。こうした「日向」から生まれる環境問題、社会問題を事業機会としようとするCSVは、大きく見た「日陰戦略」と言っていいでしょう。

具体的な例では、CVCCエンジン、プリウスなどは、環境問題に対応した「日陰戦略」として生まれ、他社と差別化することで、それぞれホンダ、トヨタの競争力向上に大きく貢献しています。

多くのビジネスリーダーは、まだCSVに対して懐疑的だと思いますが、だからこそビジネスの妙味があります。多くの企業が「まだ早い」「良く分からない」としている領域にこそ、他社と差別化するユニークな価値を生み出せる可能性があります。

人々はこれからも、経済成長、豊かさを追求していくでしょう。そこには「日陰」としての様々な新しい社会・環境問題が必ず生み出されます。さらに言えば、地球や資源の有限性が明らかとなる中、「日向」に対する影の伸びは大きくなっています。社会・環境問題を事業機会とするCSVは、「日陰戦略」「裏張り」ではありますが、成長性のある「日陰戦略」「裏張り」なのです。

(参考)

日本経済新聞(2016年5月25日)「経済教室」

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