社会課題の解決というゲームのルールを創り出す -ブリタの事例から-

2012-04-12 09:03 am

米国でザ・クロロックス・カンパニーがライセンス販売するポット型浄水器「ブリタ」は、1987年に販売されると同時に大ヒット商品となり、2002年には、市場の70%を占めていました。ところが、ボトル入りウォーターの普及に伴い、市場が縮小し、ブリタの売上も減少、2007年5月には、クロロックスのCEOが株主に向けて、「2年以内に改善のめどがたたなければ、ブリタのブランドを売却する」と発表するに至りました。

しかし、その後、わずか数ヶ月でブリタは勢いを取り戻し、2桁成長を達成してブランドを一気に再生しました。そのときの戦略が「環境問題への対応を訴求ポイントとして、新たなゲームのルールを創り出す」というものでした。

当時、ボトル入りウォーターについては、世界自然保護基金などの団体が、プラスチックごみを大量に発生させて埋め立て処理をマヒ状態に陥れたり、水道水よりおいしくてヘルシーであるという虚偽の広告を行っていると批判していました。ブリタの担当チームは、ここにビジネスチャンスを見出し、ブリタの環境影響を調査しました。その結果、ペットボトル入り飲料水の代わりにブリタのシステムを利用すれば、埋め立て処理されるペットボトルを年間数百万本も削減できることがわかりました。

このメリットを訴求すべく、ブリタ担当チームは、統合型のクロスメディア・コミュニケーション戦略を実行して「ブリタ」の環境特性をアピールしながら、ペットボトル廃棄物に関する情報を消費者に提供し、より環境にやさしい代替手段の利用を奨励しました。当該コミュニケーション戦略の一環として、同社はフィルターフォーグッドというウェブサイトを立ち上げ、再利用可能なボトルに切り替えてプラスチック廃棄物を減らすよう訪問者に呼びかけています。このウェブサイトには、節約されたペットボトルの数量を随時グラフィック表示する仕掛けが組み込まれています。また、ブリタの担当チームは、テレビ番組と提携するなど、フィルターフォーグッドがメディアに注目されるように仕向けました。

こうしたプロモーションの結果、ブリタのポット型浄水器はわずか1年で23%も売上を伸ばし、ブランドを再生することに成功しました。

「ブリタ」が採ったのは、競合製品が抱える社会・環境課題に注目を集め、社会・環境面で問題のない自社製品をアピールする戦略です。これにより、競合製品も社会・環境課題に対応せざるを得なくなり、社会課題対応競争とも言うべき、新たなゲームのルールを創り出すことができます。社会・環境面で優れた製品・サービスを提供している企業は、こうしたゲームのルールを自ら創り出すことにより、優位に立つことが出来ます。

他社製品攻撃とも考えられるこうした戦略には抵抗のある方もいるかも知れませんが、社会・環境問題を解決するという大儀に則った戦略であり、消費者の理解も得られやすく、積極的に取り組んで良いのではないかと思います。

一方、こうした社会・環境問題への対応を訴求する戦略を採る場合には、グリーンウォッシュなどと批判されないようにする必要があります。

ブリタの担当チームは、「ブリタ」は、フィルター・カートリッジを数ヶ月ごとに交換しなければならず、それが廃棄物になるという問題を抱えていることを認識していました。そこで、フィルターのリサイクル・プログラムを立ち上げ、環境にマイナスな影響を軽減し、自社のサステナビリティへの取り組みの信頼を向上させました。

社会課題の解決を新たな競争ルールとすることは、自社を律する効果もあります。自社・他社の行動を社会に良い方向に向かわせ社会価値を生み出しつつ、自社製品・サービスの売り上げを伸ばす。これもCSV(Creating Shared Value)戦略の一つと言えるでしょう。

(参考)

「グリーン成長に向けた製品戦略フレームワーク」(DIAMONSハーバード・ビジネス・レビュー2010年11月号)

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