サステナビリティビジネス2.0

2018-07-18 10:53 pm

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューの「サステナビリティビジネス2.0」に関する論文の概要を紹介します。サブタイトルは、「サステナビリティを経営に統合する時代から、市場を変革する時代へ」です。

現在、90%以上のCEOが、企業の成功のためには、サステナビリティが重要であると考えています。また、88%のビジネススクールの生徒が、ビジネスにおける社会・環境面を学ぶことは優先的な課題であると認識し、67%の生徒が、将来の仕事にサステナビリティを組み込みたいと考えています。こうした動きを受けて、学生にビジネスと社会に関するコースの受講を求めるビジネススクールは、2001年の34%から、2011年には79%に増えています。今や、米国トップ100MBAプログラムの46%で、ビジネスとサステナビリティの授業が教えられています。

しかし、サステナブルなビジネスは、それだけでは持続可能な世界を創ることはできません。市場の変化に対応して、サステナビリティを経営に統合することでは不十分です。市場自体を変革することが必要です。市場が変化してビジネスに対するインセンティブを生み出すのを待つのではなく、変化を創り出すことが必要です。

【サステナブルビジネス1.0】
市場の変化がビジネスのサステナビリティをもたらす考え方です。規制、NGOのプレッシャー、サプライチェーン上の要請、ESG投資、消費者の意識の変化などが、企業にサステナブルなビジネスを推進することを求めます。CSRは、市場やステークホルダーの要請にこたえるもので、CSVは、そうした要請を経営と統合して競争力を高めようとするものです。

例えば、ワールプールは、消費者が家電に求めるものとして、省エネの優先順位が、1980年代の12番目から、価格、性能に次ぐ3番目まで上がってきていることを受けて、エネルギー効率を高めてきました。LOHASを重視する消費者市場も拡大しています。ESG投資も拡大し、全体の1/5まで拡大しています。このように市場は変化し続けています。消費者は、サステナブルな商品やサービスを選択するようになっています。これは良い動きですが、これだけでは本質的に問題を解決することはできません。このように市場の変化に対応する企業のあり方を通じて、世界がサステナブルな方向に向かっているとは、言えません。

【サステナブルビジネス2.0】
サステナビリティはビジネスのメインストリームに組み込まれるようになっていますが、人類の活動の環境へのインパクトは続いており、プラネタリー・バウンダリーを超えつつあります。幸運にも資本主義は柔軟であり、多くの企業は、サステナビリティのチャレンジが、新しい市場モデルを必要としていることを認識しています。ユニリーバCEOのポール・ポールマン氏は、「我々は、責任あるビジネス世界が、政治より先に行き、社会に貢献する広い役割を果たすという、歴史的に非常に面白い時期に入っている。」と言っています。

「市場変革」と呼ばれるビジネス・サステナビリティの次のフェーズは、環境は無制限、自然の価値を経済価値で測る、際限のない消費や永遠の経済成長が可能であるという前提に立つ古い考えを捨て去ります。市場における役割を与えられるものとして受け入れるのではなく、気候変動などの問題をビジネスに統合し、カーボンニュートラル、カーボンネガティブな市場へと変化させます。どのように実現するかは、必ずしも明確となっていませんが、こうした変化は、単独の企業や製品だけでは不可能であることは明らかです。市場全体を変化させることが求められます。

本当のサステナビリティは、発電、送電、分配などのエネルギーグリッドや、電機製品、スマートメーター、モビリティが統合されるようなシステムとして創られるものです。EVやソーラー、デジタル技術がそうした新しいビジネスモデルを可能としつつあります。

サステナビリティ革命は、2つのフェーズから始まると考えられます。企業が役割を果たすためにビジネス戦略を再考すること、ビジネスモデルの概念が変わること、です。「ビジネス戦略の再考」は、少なくとも4つの新しい方向性、オペレーション、パートナーシップ、ガバメント・エンゲージメント、透明性を含みます。

「オペレーションの新しいコンセプト」:市場変革は、気候変動のリスク軽減、資源の持続性と価格の変動回避などのため、サプライチェーン・ロジスティクスの最適化を求めます。そのために、ビジネスは、リニアモデルからサーキュラーモデルに変化しつつあります。

「パートナーシップの新コンセプト」:NPO、政府、競合、他業界とのパートナーシップで市場を変革します。フォードは、サンパワー、ワールプール、イートンなどとともに、EV、ソーラー、省エネ家電、スマートホームが統合され、カーボンフットプリントを削減するシステムを構築しています。

「エンゲージメントの新コンセプト」:ポジティブなロビイングによる政策作りを進めます。インテルが紛争鉱物に対応するため、ドッド・フランク法を働きかけた例などがあります。

「透明性の新コンセプト」:サステナビリティの情報開示には、GRI、CDPがありますが、さらなる透明性が求められます。IBMは、ウェルマートなどのパートナー企業と、ブロックチェーンを用いたサプライチェーンの透明性を進めています。

「ビジネスの概念の変化」には、パーパス、消費、ビジネスの成功の評価の新しい概念が求められます。

「パーパスの新しい概念」:ステークホルダーに金銭的利益を配分するだけでなく、社会的価値を中心に企業経営を行います。これには、ベネフィット・コーポレーションなどの枠組みがあります。

「消費の新しい概念」:サステナブルな消費を求めるものです。パタゴニアは、消費者に持続可能な消費を求めています。消費の前に、24時間考える、ブラックフライデーに店を閉めるといった動きも起こっています。

「ビジネスモデルと評価の新しい概念」:経済的欲求を超えるビジネスの新しい概念が提唱されています。CSV、コンシャス・キャピタリズムなどは、新しいビジネスモデルの考えと言えます。ディスカウントレートは、将来を過少評価し、GDPは、社会にネガティブな影響を与えるものも含みます。企業を評価する新しい概念が必要です。

「サステナビリティビジネス2.0」は、本質的なサステナビリティを追求しようとするものです。世界では、具体的な動きも出始めています。日本でも、こうした取り組みを進める企業が、少しでも増えるようにしていきたいと思います。

(参考)

ssir.org/articles/entry/the_next_phase_of_business_sustainability

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。

csv-jp.org/related_info.html

bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/index.html

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