TCFD対応の現状とユニリーバのシナリオ分析

2018-10-01 09:44 am

昨年6月の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言書の発行以降、サステナビリティ業界では、気候変動の企業経営への影響の把握と情報開示について、関心が高まっています。そのTCFDが先週、TCFD提言への対応状況を示す”2018 Status Report”を発行しました。

気候変動でリスクに曝される財は、4.2兆ドルから43兆ドルと見積もられており、不確実性の高いものですが、企業経営に大きな影響を及ぼすことは、間違いありません。そのため、現在までに、287の金融機関を含む457企業と56の政府等の機関がTCFDへの賛同を表明しています。“Status Report”では、TCFD提言への対応状況について、以下のように示されています。

「多く企業は、サステナビリティレポートなどで、気候関連情報を開示し、レビューしている。しかし、気候変動が財務に及ぼす影響について開示している企業は、ほとんどない。」
「気候関連の異なるシナリオにおける戦略のレジリエンスに関する情報は、限定的で、TCFDがフォーカスする2℃以下のシナリオを含む、異なるシナリオでの戦略のレジリエンスを表現している企業は、ほとんどない。」
「業界や地域により情報開示の状況は異なる。例えば、金融以外では、気候関連の定量情報や目標を開示するケースが多く、金融では、気候変動を含むリスクマネジメントのプロセスを開示するケースが多い。地域別では、欧州で、TCFD提言に基づく情報開示をしている企業が多い。」

こういった状況で、TCFDへの対応は、まだまだという感じですが、Status Reportでは、参考となりそうな、企業の情報開示事例も多く掲載されています。例えば、ユニリーバは、気候変動のインパクトに関して、アニュアルレポートで以下のように示しています。

「ユニリーバは、気候変動を主要リスクとして特定しており、そのビジネスへのインパクトを理解するため、2100年までに平均気温が2℃および4℃増加するシナリオについて、2030年までのビジネスへの影響を評価した。なお、2030年までは、概ね現在と同じビジネスを展開していると仮定した。また、2℃シナリオでは、社会が温室効果ガス削減に急速に動き、1トン75-100ドルのカーボン・プライシングなどの施策を導入する一方、水不足などの重大な物理的影響はないと仮定した。4℃シナリオでは、野心的な気候政策は導入されず、2030年までに物理的な気候変動の影響が明らかになると仮定した。」

「2℃シナリオでは、主要国でカーボン・プライシングが導入される結果、製造コストおよび乳製品原料やパッケージに使われる金属などの原材料コストが増加する。森林破壊ネットゼロが要求され、サステナブルな農業へのシフトが農業生産への圧力となり、一部原材料の価格が上昇する。」

「4℃シナリオでは、慢性的かつ急性の水ストレスにより、一部地域の農業生産性が減少し、原材料価格が高騰する。台風や洪水などの異常気象が頻繁に起こり、製造や流通ネットワークの断絶が増える。気温上昇と異常気象により、経済活動が停滞し、GDPの成長と売上が減少する。」

「いずれのシナリオでも、気候変動の影響に対応しなければ、主にコスト上昇により、2030年までにユニリーバにとって財務リスクとなる。しかし、財務リスクをマネジメントする必要はあるものの、ビジネスモデルを大きく変えなければならないということではない。いずれのシナリオでも、最も重大な影響は、サプライチェーンにおける原材料およびパッケージのコスト上昇である。売上や自社の製造オペレーションへの影響は、比較的小さい。いずれにせよ、分析結果を踏まえ、将来に向けて、気候変動の影響を緩和するために必要なアクションプランを実行する必要がある。我々は、気候変動の農業サプライチェーンへの影響、重要な市場と生産への気候パターンの変化の影響をさらに分析することを計画している。」

気候変動の影響は、事業特性、市場やサプライチェーンの展開状況によって異なります。それがどのように経営に影響するか、改めて分析することは、経営の重要課題となっています。最初は、CSR部門などが主導する簡易的なものでも良いので、まずは、取り組みを始めることが重要でしょう。

(参考)
TCFD 2018 Status Report

www.fsb-tcfd.org/wp-content/uploads/2018/09/FINAL-2018-TCFD-Status-Report-092618.pdf

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。

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