DHBRの特集から、パーパスを改めて整理する

2019-02-12 09:22 am

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)の特集は「パーパス」。先月の「コレクティブ・インパクト」に続いて、私が以前からブログで紹介している言葉、コンセプトがDHBRで特集されるのは、シェアード・バリューや経営とサステナビリティの統合の方向に時代が動いていることを裏付けていると感じます。DHBRでは、パーパスを様々な側面から論じていますが、その定義や基本的考えの面でも、なるほどという内容が多くありました。

特集の最初は、ネスレ日本の高岡社長のインタビュー記事です。この中で高岡社長はパーパスについて、ネスレの事業活動の原則であるCSVの目的や意義を理解してもらうためにも、ネスレという会社が何のために存在しているのかを共有することが必要と考え、数年間の議論を経て2016年に「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」というパーパスを定義したとしています。そして、「パーパスは企業と従業員が締結する労働契約の原点」「ミレニアル世代のような若い人たちほど、自分の志と会社の存在意義が合致することを大切にしている」とその意義を語っています。

次のBIOTOPE社長の佐宗氏の論文では、21世紀型経営モデルである社内外から経営資源を呼び込み持続的に価値を生み出す組織のカギは、「存在意義」に賛同・共感・自分ごと化してもらうことであるとして、パーパスおよびパーパス・ブランディングを語っています。この論文では、ミッション、ビジョン。バリューを20世紀型組織と21世紀型組織の相違も含めて整理していますが、パーパスについては、ミッションの1つの種類と位置づけています。ミッションには、「自分たちは社会に何を働きかけたいのか」と外側の目指す姿に重点が置かれたものと、「自分たちは社会の中でどうありたいのか」と内側に重心が置かれたものがあり、前者を「パーパス型ミッション」、後者と「アイデンティティ型ミッション」と名付けています。そして、「いまやあらゆる組織が21世紀型の経営モデルと切り離せないので、組織外の人材を引き付ける求心力の発揮が不可欠。パーパスはそれを生み出す起点。すべての産業が変革期を迎えた今、既存のミッションをパーパス型ミッションに翻訳して発信することで、集団としての求心力を高める必要性がある組織は多いのではないか」としています。

3つ目のミシガン大学教授らの論文では、パーパス・ドリブンの組織を構築する8つのステップのフレームワークが紹介されていますが、その中では、「信頼できるパーパスが事業戦略や意思決定に浸透した時に、個人の利益と全体の利益が一つになる」という言葉が印象的でした。日本の事例として紹介されている中川政七商店の中川会長のインタビューでは、パーパスは「テンションが上がるもの」でなければならない、「こうありたい」「こうしていくのだ」という意志を込めるためには「動詞」でなければならない、という言葉が印象に残りました。

その他、コンサルタントのグラハム・ケニー氏は、パーパスは「会社が会社自体をどう展望すべきか。どのように行動すべきかを強調する」「組織を外から見つめ、事業が人々の生活にもたらす違いを考えるもの」「組織に別の一面を加えて、単なる取引システムを関係へと変容させる」ものとし、パーパス・ステートメントは「顧客、クライアント、学生、患者など、自社のサービスの対象となるすべての人々の営みにインパクトを与える」ものであるべきとしています。また、パーパスと収益との関係を研究した論文では、パーパスが「経営層からミドル層にしっかりと受け入れられるような方法で、明快で簡潔な指示を出して実施される」場合は、収益面でも優れると結論付けています。

パーパスの必要性は多くのビジネス・パーソンが感じていることだと思いますが、ミッションとの違いが分かりにくい、どのようにパーパスを定義しどう実践していけば良いのかなど、いろいろ疑問もあると思います。今回のDHBRは、そうした疑問を払拭する上で、またパーパスの定義や実践に向けて社内を説得する材料を整理する上で、参考となる知見を多く提供してくれています。

(参考)
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2019年3月号

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参考CSV情報

csv-jp.org/related_info.html

bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2856747026032018000000?page=5

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