社会課題解決イノベーターのDNA

2012-06-18 08:55 am

イノベーション創出の起点は、「既存の要素の新しい組み合わせ」であるアイデアです。アインシュタインは創造的思考を「組み合わせ遊び」と呼び、スティーブ・ジョブスは「創造とは結び付けることだ」と言っています。

実際、革新的なイノベーションを生み出したイノベーターは、まったく異質なアイデアやモノ、サービス、技術、学問分野などを結びつけて、新しく型破りなイノベーションに仕立て上げています。

クレイトン・クリステンセンの著書「イノベーションのDNA」は、こうした「既存の要素の新しい組み合わせ」を生み出すイノベーターについての研究成果です。アマゾンのジェフ・ベゾフなど革新的な製品・サービスを生み出した100名近くのイノベーターへのインタビューおよび約500名のイノベーターと約5,000名の経営幹部の比較研究から、イノベーターを典型的な企業幹部と区別する5つのスキルを明らかにしています。

5つのスキルとは、「関連づけ思考」と、それを誘発する「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」の4つの発見力です。

まず何よりも、イノベーターは「関連づけ思考」をふんだんに働かせます。関連づけが起きるのは、脳が真新しいインプットをさまざまな形で組み合わせ、理解しようとするときです。イノベーターは、一見無関係に見える疑問や問題、アイデアを結びつけ、新しい方向性を見出すことができます。これは、イノベーションが「既存の要素の組み合わせ」である以上、納得できるものです。

イノベーターは、残る4つの発見力を駆使して、イノベーティブなアイデアのもとになる「アイデア成分」の在庫を増やし、関連づけの思考を誘発します。「モノゴトの本質を問う質問」「周囲を深く洞察する観察」「多様な背景や考え方を持つ人たちとの幅広いネットワーク」で知識・アイデアを増やし、「様々な実験」を通じてアイデアを検証することにより、「関連づけ思考」を促進するのです。

社会課題解決イノベーションは、「社会課題と解決策の新しい組み合わせ」です。社会課題解決イノベーションを生み出す社会課題解決イノベーターは、「社会課題に精通していること」「社会課題の解決策について幅広い知識・アイデアを持っていること」が求められます。

イノベーターの5つのスキルと関連づけると、社会課題解決イノベーターは、まず社会課題を良く知るNPO/NGOや専門家などとのネットワークを構築し、対話・質問を繰り返します。一方で、社会課題の現場を訪問し、良く観察します。こうしたことを通じて、社会課題に対する理解を深め、解決策についてのヒントを得ます。

そして、社会課題に対する理解を深めつつ、社内でミツバチのようにいろいろな部署・人の間を飛び回り、解決策のアイデアをかき集め、社外のアイデアも含め、社会課題解決に向けてアイデアを組み合わせます。社内で部門横断的なブレストなどを実施するのも良いでしょう。その後、社会課題解決アイデアを社会貢献的に実施する実験を通じて検証します。

社会課題解決イノベーターは、社会課題に対する感性と広い視野を持ち、フットワーク良く社会課題の現場を訪問したり、NPO/NGOなどの人々と対話するようなタイプの人がふさわしいでしょう。

社会課題解決イノベーションを推進するには、社会課題解決イノベーターの役割を組織として設置するのが望ましいとは思いますが、現状では、社会課題解決への強い思いを持つ人が、課外活動的に組織内で自律的に動いて社会課題解決イノベーションを推進することでも良いのではないかと思います。

「イノベーションのDNA」は、アップルの「シンク・ディファレント」キャンペーンの言葉で結ばれています。

「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えている」そういう人生を送りましょう。やるならいましかない。

(参考)

「イノベーションのDNA」クレイトン・クリステンセン/ジェフリー・ダイアー/ハル・グレガーセン著(翔泳社、2012年)

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