日本の農業を救うCSV -サプライヤーの育成-

2012-06-25 08:19 am

CSVの元祖は、ネスレです。2005年には、既にCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)のコンセプトを打ち出しています。

そのネスレのCSV活動として最も有名なのが、「サプライヤーの育成」です。サプライヤーが抱える課題を解決するよう支援を行い、一方で高品質原料の安定調達を実現しようとするものです。

例えば、ネスレは、プレミアム・コーヒー用の豆の調達に関して、コーヒー農家に栽培技術・ノウハウを提供するほか、銀行融資の保証や、苗木、農薬、肥料などの確保を支援するなどの支援を行っています。

この背景には、ほとんどのコーヒー豆は、アフリカや中南米の貧困地域の零細農家が栽培しており、低い生産性、劣悪な作業環境の中で、ネスレが求める品質のコーヒー豆の調達が難しいという現実があります。

そうした現実を踏まえ、ネスレは、自らがコーヒー農家を支援・育成することを通じて、高品質な豆の安定調達を実現しています。

また、途上国におけるミルクの調達に関しても、冷蔵設備を供えたミルク集荷所の設置、獣医、栄養士、農地管理士によるアドバイス、家畜に対する医薬品・栄養剤投与、毎月の農民への研修、ミルクの品質に影響する飼料の質を高めるための灌漑の改善支援など、非常に幅広くサプライヤーを支援しています。

これにより、途上国におけるミルクの品質と安定調達を確保し、地域の発展に伴うミルク需要の創造も併せ、途上国でのビジネス展開を効果的に進めています。サプライヤーの支援は、途上国市場を開拓するために必要な投資と考えられているのです。

ネスレは、こうした活動を、農学者、政府、NGOと連携しながら世界の多くの地域で実践しています。

この「サプライヤーの育成」は、日本の農業の抱える問題を解決するためにも有効な考え方です。

日本の農家の平均年齢は66歳に達し、後継者も不足しており、将来が危ぶまれる状況です。農家に後継者が現れない大きな理由の一つが経営の不安定さにあります。余りにも経営の見通しが立ちにくいため、農業に関心を持つ若者は沢山いるにもかかわらず、なかなか職業として選択できない状況にあります。

企業による「サプライヤーの育成」は、この農家の経営の不安定さを解消し、農業に若者を引き付けることができます。

例えば、モスフードサービスは、契約農家に対し、種を撒く前に買う量と値段を約束しています。ハンバーガーに使うレタスは、市場価格が1kg90~350円と大きく揺れ動いているため、野菜農家は、なかなか経営の見通しを立てるのが難しい状況にあります。しかし、調達価格が予め決められているモスの契約農家は、相場を気にすることなく、先を見通せるため安心して規模を拡大できます。

こうした取り組みが若者を引き付け、モスの契約農家は20-30代が中心となっており、売上も安定的に伸びています。

また、”お~いお茶”で知られる伊藤園は、高齢化や後継者不足が深刻化している茶生産農家への栽培技術の提供や茶葉の全量買取により、茶生産農家の経営安定につなげています。これにより、伊藤園は、茶葉の安定調達、品質向上を実現しています。

食品メーカーや流通事業者が、自社事業と関連の深い農作物を栽培している農家を支援すすることにより、高品質原料の安定調達を実現し、それが企業の競争力や新しい市場の創造につながるという可能性はもっとあるのではないかと思います。

企業による「サプライヤーの育成」が広く行われるようになれば、日本の農業の課題を大きく改善することが可能ではないでしょうか。

(参考)

「共通価値の戦略」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2011年6月号)

「競争優位のCSR戦略」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2008年1月号)

「TPP農業再生の条件」日本経済新聞朝刊(2012年4月26日)

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