オムロン SINIC理論とソーシャルニーズの創造

2012-11-19 08:54 am

オムロンは、社憲に「より良い社会をつくる」、企業理念に「企業は社会の公器である」、経営理念と一つとして、「ソーシャルニーズの創造」を掲げています。

社憲や企業理念は、創業者立石一真氏の「企業は社会に役立ってこそ存在価値があり、利潤を上げることができ、存続していける」という信念を表しています。「ソーシャルニーズの創造」とは、潜在するニーズを感知することにより、暮らしをより豊かにする、また社会の課題を解決する製品・サービスを先駆けて提供し、社会に役立つことです。

立石一真氏は、顕在化していない社会のニーズを創造してビジネスにするため、新規事業開発に積極的でした。「できませんと言うな」という口癖で技術陣を叱咤激励し、新しい事業に果敢に挑戦、駅の混雑を解消する自動改札機、渋滞を解消する交通システム、銀行の出入金時間の延長のためのCD/ATM、健康関連製品など、社会のニーズを捉えた様々な製品を生み出しています。

また、障がい者と健常者が、分け隔てなく普通に働き普通に収入を得る工場である「オムロン太陽」を他社に先んじて設立しました。障がい者の社会復帰に情熱を燃やした中村裕博士からオムロン太陽の構想を聞いた立石一真氏は、「よりよい社会をつくる」という社憲を掲げている以上、この話は断れないと考え、中村博士と共に、オムロン太陽を設立し、初年度から黒字化しています。

立石一真氏は、経営者の最大の仕事は、次の時代がどのような時代になっていくかをいち早く予測して、その時代に対応した製品を開発することだと考えていました。そのための経営の羅針盤として、「SINIC理論」という未来予測の理論を開発しています。

SINICとは、”Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字をとったもので、「SINIC理論」は、科学と技術と社会の間には円環論的な関係があり、異なる2つの方向から相互にインパクトを与えあっているとしています。ひとつの方向は、新しい科学が新しい技術を生み、それが社会へのインパクトとなって社会の変貌を促すというもの。もうひとつの方向は、逆に社会のニーズが新しい技術の開発を促し、それが新しい科学への期待となるというもの。この2つの方向が相関関係により、お互いが原因となり結果となって社会が発展していくという理論です。

www.omron.co.jp/about/corporate/vision/sinic/theory.html

SINIC理論では、社会は、14世紀までの「農業社会」から、「工業化社会」と移行し、20世紀は、「機械化社会」、「自動化社会」、「情報化社会」と、3つのプロセスが急速に移行する100年としています。そして、情報化社会の後には、2005年からの「最適化社会」、そのあと2025年からの「自律社会」へ移行すると予測されています。

工業社会において人類は物質的な豊かさを手にいれました。一方で、エネルギー、資源、食料、人権などのさまざまな問題が未解決のまま取り残されています。最適化社会では、こうした負の遺産が解決され、効率や生産性を追い求める工業社会的な価値観から、次第に人間としての生きていく喜びを追求するといった精神的な豊かさを求める価値観が高まると予測しています。

物質的豊かさから、心の豊かさや新しい生き方を求めるといった精神的な価値観が重視され、新しい精神文明に基づく生き方を行動に移していく、そんな動きが顕著になるのが最適化社会です。効率・生産性を追求するという工業社会の価値観が相対的に低下してくる一方で、人間として生きている喜び、生の歓喜の追求という価値観が相対的に大きくなってきます。そうした価値観と、それに基づくいろいろな社会システムやパラダイムの葛藤や軋みが顕在化し、新たな社会システムやパラダイムへと消化されていくプロセスが、最適化社会の20年間としています。

オムロンは、最適化社会でのソーシャルニーズを創造するため、2020年までの事業ビジョンValue Generation 2020(VG2020)では、地球に対する「新たな価値創出」へつながる新規事業づくりに取り組むとしています。「従来の効率性や生産性、経済性追求から、地球環境や精神的な豊かさなどの追求に向かう最適化社会」で求められる安心・安全、健康、環境という新たなソーシャルニーズを捉え、長期的な成長を支える新規事業を創出するとしています。

SINIC理論が開発されたのは1970年ですが、その内容は今でも新鮮で納得性の高いものです。SINIC理論で描かれている最後の社会は、「自然社会」です、「最適化社会」から「自然社会」に向けて、オムロンがソーシャルニーズをどう創造していくか、期待したいと思います。

また、オムロン以外の企業にとっても、SINIC理論は参考になります。「最適化社会」における社会問題の解決は、多くの企業にとってビジネスチャンスとなるはずです。

(参考)

オムロンHP

「私の履歴書 立石義雄」日本経済新聞朝刊

「できませんというな 立石一真ものがたり」湯谷昇羊著(DIAMONDハーバードビジネスレビュー2008年4月号、5月号)

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