マイクロソフトの中国知的財産問題への対応

2012-12-27 08:36 am

CSV*の3つのアプローチの1つ「競争基盤/クラスターのCSV」は、従来は政府の役割と考えられてきた「事業インフラ」や「競争ルール」を自ら整備するものであることは、以前に述べました。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=628

「競争ルール」には、知的財産権保護のルールもあります。知的財産を保護することは、新興国でビジネスを展開する上での大きな課題の一つです。

マイクロソフトが1990年代初期に中国に参入し始めた頃、中国の海賊版普及率は全体の98%を占めており、正規ソフトからの収益でビジネスを展開しているマイクロソフトにとっては、非常に厳しいビジネス環境でした。また、当初台湾で中国語版ソフトを開発して、中国に輸出しようとしたところ、中国政府から中国本土のソフトウェア基準を満たしていないとして、ブラックリストの対象とされるといったこともありました。

マイクロソフトは、台湾からの輸出の失敗により、中国で成功するには、現地ステークホルダーをうまく巻き込むことが重要であると理解しました。そして、中国政府と交渉を重ね、中国の大手ソフトウェア・ベンダーとローカライズ版ウィンドウズを共同開発し、他にも現地ソフトウェア・ベンダー6社と合弁事業を立ち上げました。

海賊版の問題については、中国政府に問題提起したところ、逆に、中国のソフトウェア産業の発展に貢献するよう求められました。マイクロソフトは、こうした話し合いの中から、「独自のソフトウェア産業が育っていれば、中国も海賊版撲滅に乗り出すだろう」と考えるようになりました。そして、中国のソフトウェア産業の発展のために投資することとし、中国の教育・研究開発構想に協力し、中国国内のソフトウェアおよびITセクターの発展を支援しました。

また、海賊版需要を縮小するため、新興国市場の低所得者層に手の届く価格での製品提供を進めました。例えば、ウィンドウズ・スターター・エディションは、初めてパソコンに触れる利用者を想定し、機能を単純化して廉価に販売しています。さらに、若い世代を取り込むための学生限定ソフト、PCを所有しない人たち向けの携帯電話でPCの機能の一部が使える製品なども開発しています。

加えて、知財意識を向上させるためのセミナー開催、知財法を学ぶ学生への奨学金援助などを行っています。

こうした取り組みにより、マイクロソフトは、中国において「競争ルール」としての知的財産が保護される土壌を醸成しています。これは、マイクロソフトがビジネスを発展するために必要な対応であり、同時に中国市場全体の発展を促進するCSVです。

海外のグローバル企業は、競争基盤の整っていない新興国市場でビジネスを展開するには、「競争基盤/クラスターのCSV」を実践することが不可欠であることを理解しています。日本企業もグローバル展開を本格化するにあたっては、同様な視点を持つことが必要です。

(参考)

「新興国マーケット進出戦略」タルン・カナ、クリシュナ・G・パレプ著(日本経済新聞出版社、2012年)

*CSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)については、以下を参照

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436

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