長期的視座を持つネスレのCSV経営

2013-01-21 08:53 am

CSV*の元祖であるネスレは、サプライヤーへの支援を通じた高品質な原材料の安定調達などのCSVの取り組みが良く知られていますが、経営全体がCSVを軸として行われています。

ネスレの経営を支える基本理念は、創業者アンリ・ネスレの精神「乳幼児を救う母親の愛情」を表現した鳥の巣のマークと、高品質で安全、健康づくりに結びつく食を提供し、世界中の人々をおいしくもてなそうとする「Good Food, Good Life」というスローガンに表れています。

アンリ・ネスレは、スイスの乳幼児が飢餓のために、1000人のうち143人も亡くなる状況に心を痛めていました。そして、子供たちを救うために最初の粉ミルクを発明しました。そのように社会のために価値を生み出す理念が、ネスレの経営の基本にあります。

ネスレはCSVの注力分野として、「栄養」「水資源」「農業・地域開発」を特定しています。これらは、いずれもネスレが長期的に発展していくために不可欠のものです。

「栄養」は、アンリ・ネスレ以来の基本理念に沿ったものです。現在でも、10億人の人々が飢餓に苦しむ中、ネスレがこれを解決しようとするのは、自然なことです。「栄養」の問題を解決することにこそ、ネスレの未来があります。具体的な活動としては、1日あたりの所得が10ドルに満たない世界の28億人の人々に、手ごろな価値の製品を届けるため、「手の届く価格帯の製品群(Popularity Positioned Products-PPPs)」の開発・販売などを推進しています。将来のコアビジネスを育成するための製品・サービスのCSVと言えるでしょう。

「水資源」と「農業・地域開発」は、ネスレのバリューチェーン上の重要課題に対応したものです。大量の水を必要とする農産物の生産を始め、ネスレの事業は「水資源」なしには成り立ちません。また、コーヒー、ココア、ミルクなどを途上国の小規模農家に依存するネスレにとって、「農業・地域開発」をしっかり行わなければ、事業を持続することが難しくなります。「水資源」「農業・地域開発」は、ネスレの長期的な事業の発展のためには不可欠なものです。

「水資源」に関する取り組みとしては、農業従事者への水利用のベストプラクティスの教育や効率的な水利用システム・水利技術の導入などを実施しています。「農業・地域開発」については、世界中で、農学者、政府、NGOなどと協力し、農家の品質、生産性向上のためのサポートや援助を実施しています。いずれも、いわゆるバリューチェーンのCSVです。

また、ネスレは、長期的な発展のためのCSVを進めるとともに、株式市場の短期プレッシャーに影響されないように経営を進めています。

まず、短期主義のプレッシャーが強いニューヨーク市場などには上場せず、現在は、監査済みの決算は年次のものだけで良いスイス証券取引所にのみ上場しています。IT技術が進化した現在では、世界中の市場での電子的取引が可能であり、いろいろな市場で上場する必要はないという考え方です。

それから、営業利益率を改善しながら、売上高で毎年5-6%の成長を続けるという業績目標を掲げています。同社では、これを「ネスレモデル」と呼び、16期連続でこれを達成し、この間に時価総額は4倍になっています。長期的な目標を掲げ良い業績を継続的に出し続けることで、株式市場の短期プレッシャーを求める声を掻き消し、長期的な視点で経営することができます。これにより、CSVをしっかりと進めることができます。

ネスレ会長のピーター・ブラベック氏は、言っています。

「ネスレの強さは、短期利益を最大化することではなく、長期的な視点を持って事業をしていることです。もし、長期的な視点で経営をし、すべてのステークホルダーのことを考慮に入れるのならば、自然とCSVの概念にたどり着くはずです。」

(参考)

「博愛のCSR(企業の社会的責任)」はもういらない

business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130110/242058/?rt=nocnt

*「CSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)」については、以下を参照

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436

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