CSVで中国市場を攻める

2013-02-25 08:31 am

地理的・文化的距離も近く、急成長中で早ければ2016年にもGDPで米国を抜いて世界最大の市場になると予測されている中国。人口が減少し国内市場の縮小が予測されている日本の企業としては、中国市場に関心を持たないわけにはいきません。

一方で、中国はいろいろな社会問題を抱えている国でもあります。「社会問題を抱えているが、魅力的な市場」、ここはCSV*戦略が最も生かせる市場です。

日本企業でも、CSVの実践により中国市場で成功している企業がいくつもあります。以前ご紹介した中国で省エネインバーターエアコンを普及させているダイキン工業**もそうですし、今回ご紹介するクボタも代表的な事例です。クボタは、中国の農業が抱える問題を解決しつつ、事業を成長させています。

中国では、日本以上に小規模農家が多く、2009年の農業従事者1人当たりの耕地面積は、日本の1.6ヘクタールに対して中国は0.1ヘクタールです。また、都市への労働力の流出、少子高齢化で農業の担い手が急減しています。こうした背景による農業の近代化の遅れ、農村の荒廃、農民の貧困は、「三農問題」と言われ、中国最大の社会問題の1つとなっています。

「農業の効率化により、豊かで安定的な食料の生産に貢献する。」を経営の重点課題に掲げるクボタは、農業の効率化を中国でも実践し、農業の生産性向上を通じて「三農問題」に対応しています。

クボタの農機は性能が良く、稲作に特化したコンバインでは、中国製品より約5割高いのですが60%の販売シェアを持ちます。「中国メーカー製では10日かかる刈り取りが、クボタ製なら5日で済む。」「クボタの農機は欠かせない。農民の年収も3倍に増えた。」など、中国の農家からも高い評価を得ています。

クボタの農機は高性能であるだけでなく、耐久性に優れ壊れにくいこと、燃費が良いことなども高く評価されています。また、部品交換や修理にもすぐに対応できるきめ細かいサービス体制を構築しています。

中国には、賃刈屋という、中国各地に広がる田んぼで、コンバインを使って稲の刈り取りやもみの脱穀を請け負う業者がいますが、クボタの部品を積んだサービスカーは、賃刈屋のトラックにくっついて中国全土を走っています。また、中国各地に代理店を持ち、しっかりしたネットワークを構築しており、一つの指示で全国の代理店が即時に対応できます。さらに各地のユーザーから上がってきた現場の声を、集約して改善に生かす仕組みも構築しています。

クボタは、また、農家の生産性向上のためのノウハウを提供しています。130ヘクタールの「クボタ農場」を開き、最近の農業機器と栽培方法を導入、公開しています。このクボタ農場には多くの農業関係者が訪問し、生産性向上のノウハウを学んでいます。今後は各地にクボタ農場を設立し、農業の発展を支えていく計画です。前述の賃刈屋に対しても、各地域をどう回り、収穫をどう増やしていくか、といったことをアドバイスしています。

「中国の抱える農業問題を解決する」「中国の農業とともに自らも発展する」という視点でビジネスを展開していることが、クボタの成功をもたらしています。

大気・土壌・水質汚染、急速な高齢化、食の安全など、中国はたくさんの社会問題を抱えています。一方、日本企業は、こうした問題に中国企業に先んじて取り組んでいます。日本企業が培ってきた技術・ノウハウを中国の社会問題解決のために利用しない手はありません。

日本と中国に間には、いろいろな政治問題があり、国民感情的にも複雑なものがあります。しかし、「社会問題を解決してくれる」のであれば、中国政府は日本企業を大いにサポートするはずです。

日本企業が持つ社会問題を解決するノウハウを生かし、中国市場で社会問題の解決と事業の成長を両立させる。CSVこそが、日本企業が中国市場を攻める上で、求められている戦略です。

(参考)

「中国と生きる道」日経ビジネス(2013.2.18)

*) CSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)について

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436

**) 「市場の新しい常識を創る CSV ダイキン工業の事例」

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=707

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