これからの社会の変化とCSR
社会全体の意識がついてこない
野村氏:日本では、環境問題ひとつとっても、社会全体の意識はあまり高まっていないと感じています。企業の側から言わせると、生活者がみんな環境に配慮されている商品を好み、購買するようになれば、企業はあっという間にそっちを向くだろうに、とは思います。
中村氏:企業はそれなりに頑張っていると私は思うのですよ。ただそういうものを認める一般社会の雰囲気というか受け皿がなければ、経済行為としてそれを選択できないという現実がある。企業が技術革新を起こして何とかしてくれる、と企業だけに頼り、責任を負わすのは絶対に良くない、ということだけは言っておきたいと思います。
豊田氏:企業には今でも、「売れるものをつくって何ぼ。一番収益に貢献しそうな人が社長になっていく」という絶対的な評価軸がある。ただここ数年間で、その一本しかなかった評価軸のところにもう一本、「環境や社会への貢献」という軸ができかかってきているのも事実。今後はそれをどう育てていくかではないでしょうか。
中村氏:たとえば自動車がいい例だと思うのですが、そこでは環境に対する投資やものづくりでの努力が経済価値に置き換えられつつある。それは世の中の消費者の行動がそうなっているからです。しかしそうでない現実がまだまだあって、世の中に対する、特に一般の方に対する働きかけをどうしていくのかがやはり重要になるのではないかと思います。
辰巳氏:私たちはものを選ぶときに、商品のライフサイクルを見てきちんと選択しなければいけない、と言い続けています。地球温暖化が話題となって、自動車でも使用時におけるCO2削減ばかりが注目されますが、資源をとってきて生産するまでの環境負荷はどうか、また使い終わった後の廃棄段階での環境負荷はどうか。でも情報提供がされないためにそこがよく見えない。消費者が企業を支え、パートナーシップをつくっていくためには、そういうところをきちんと伝えていただかないと。
水口氏:私が消費者側に責任がある、と言われるのがちょっと違うなと思うのは、消費者はすでにあるものの中からしか買うことができない、ということがひとつ。そして企業は今まで本当に消費者が欲しいものを提供してきたか、売りたいものを買わせてきたという側面はないか、とは思いますね。
辰巳氏:そういった意味でも、私は消費者のどこを見て消費者ニーズと言われているのか疑問だと思うことがよくあります。たとえば身近な例でいうと、缶やペットの飲料のラベルが曲がったり、ずれていたりすることでその商品は市場に出ず、廃棄処分となる。その理由を尋ねると「消費者のニーズですから」と言われる。そんなことを消費者は、本当は望んでなんかいないと思いますよ。
豊田氏:でも店頭で他社の商品と一緒に並びますから。企業としては極めて自然な行動のような気がします。消費者がそう選ぶ限りは。
中村氏:それは対話が足りなかった、ということなのではないでしょうか。たとえばそういう商品は半額にしたら消費者だって買うかもしれませんし。企業だって商品を廃棄するのにもコストがかかるのですから。今、食品の表示の問題がいろいろ言われていますが、賞味期限が過ぎても、食べられるうちは食べようという考え方だって一方であるんです。だから消費者と企業がもっときちんと対話をすれば、いろいろなことがいい方向に向かう可能性は十分あるのではないかと私は思っています。
野村氏:私も企業と生活者が絶えず対立関係にあるという考え方には違和感を感じています。企業とは何か。企業といっても、実体としてそういうものがあるわけではなくて、結局人の集まりで、僕らも家に帰ったら生活者なのですね。我々一人ひとりが、企業、生活者の両方の目を持ってきちんと考えなければいけない時期に来ているのだと思います。
辰巳氏:プラス何が本当に豊かなのか、ということも、もっときちんと考えていく必要がありますね。
