プーマと環境損益計算書(EP&L)
ドイツのスポーツ用品企業のプーマ(PUMA)は、企業理念に「PUMAは、最も望まれ、地球に優しいスポーツ・ライフスタイル企業となるべく、長期的な活動を行っています。」と掲げ、衣類のコンポスタブル化など様々な活動を実施しています。
そのプーマの取り組みで最近注目を浴びているのが、プーマ事業の環境への影響を定量化し金額換算した環境損益計算書(Environmental Profit and Loss (EP&L) Statement)の公表です。
昨年11月に公表された2010年におけるEP&Lは、プーマ事業のバリューチェーンからもたらされる温室効果ガス(GHG)、水資源利用、土地利用、大気および水質汚染などの環境への影響を金額換算しており、その主な内容は、以下のとおりです。
#2010年のプーマ事業の環境への影響は、1億4,500万ユーロ
#1億4,500万ユーロの環境影響のうち94%の1億3,700万ユーロがプーマのサプライチェーンから生じており、事務所や倉庫、ショップ、物流などのプーマ本体の活動から生じているのは6%のみ
#環境影響の半分以上(57%、8,300万ユーロ)が、サプライチェーンの最上流である原材料加工(皮、コットン、ゴムを含む)にかかわっている。
#GHGと水資源利用の影響度は同程度で、この2つで全体の影響度の65%を占めている(それぞれ約4,700万ユーロ)
#農業用および施設用土地利用が生物多様性と生態系にもたらす影響は、3,700万ユーロで全体の26%。このうち91%が原材料に革を利用するフットウェア関連
#プーマ本体の環境影響の90%はGHGによる
このEP&Lの作成により、サプライチェーンによる環境負荷が大きいことが明らかになったため、プーマは、サプライチェーンへの対応をさらに進めようとしています。
プーマは、EP&Lを作成するメリットとして、以下を挙げています。
#戦略ツールとして:よりサステナブルな綿や皮革の利用、GHG削減などのためには、どこを改善すれば良いか、ピンポイントで把握できる
#リスクマネジメントツールとして:水資源の利用やGHG排出コストなどのリスクを早期に発見できる
#透明性ツールとして:従来の財務やオペレーションに加え、環境面での影響も考慮した事業上の決断が可能となる
プーマは、グッチやイヴサンローランなどを抱えるPPRグループの一員ですが、PPRグループでは、EP&Lの取り組みを2015年までにグループ内の全ての高級ブランドおよびスポーツ&ライフスタイルブランドに導入するとしています。
また、プーマでは、将来的には、環境面に加え、健康、教育、クオリティ・オブ・ライフといった社会面についての影響も金額換算していくとしています。
現在のサステナビリティの大きな課題として、企業活動の環境や社会に対する影響が損益計算書に反映されていないことが良く言われますが、プーマの取り組みは、企業活動の環境や社会への影響を内部化し、サステナビリティの視点から適切な経営判断を下せるようになるという点で、非常に期待できる取り組みです。
私もバリューチェーンにおける環境面や社会面の負荷を定量化、金額換算したことがありますが、ある程度の前提を置いて計算すれば、経営判断に耐えるだけのものは作成可能と考えています。こういった活動は、どんどん進めていきたいですね。
(参考)PUMA HPおよび下記サイト
www.greenbiz.com/blog/2012/02/10/pumas-eco-impacts-kicks-ball-forward-transparency
www.greenbiz.com/blog/2011/10/27/whats-next-pumas-groundbreaking-sustainability-plans