CVSヘルスの戦略的なCSVの推進

2015-06-04 08:42 am

昨年、米ドラッグストアチェーン大手CVSケアマークがCVSヘルスと名称を改め、タバコの販売を中止したことが話題になりました。「健康」を企業戦略の中核に据え、その戦略と整合しないタバコの販売は、20億ドルの売上がありましたが、止めることにしたのです。タバコの販売を最初に停止した、健康に配慮するドラッグストアとしてブランディングし、処方薬調剤プログラムなどの事業で業績を伸ばし、基本的医療サービスを広範に提供するチェーンとして優位性を確保しようとしています。今のところ、その戦略は成功し、2014年第4四半期の売上は、タバコ分の売上減少を補って、前年比12.9%の売上増を記録しています。

CSVヘルスについては、今年のShared Value Summit2015で、マイケル・ポーター教授も講演で引用していましたが、最近のCSVの潮流である「コーポレート戦略としてのCSV」、「目的(=CSVマテリアリティ)に基づく事業ポートフォリオの組み換え」の代表例です。そして、CSVヘルスは、タバコの販売を中止したことを競争優位に結びつけるため、ビジネス環境のCSVを推進しています。

まず、CSVヘルス財団は、500万ドルをかけて、子ども禁煙キャンペーンを実施することを発表しました。若年層の喫煙や受動喫煙を減らす取り組みをしている組織を支援しようとするものです。それから、CSV財団は、NPOを支援して、喫煙率の高い退役軍人や障がい者などのための禁煙プログラムを推進することを発表しました。これらは、CVSヘルスのCSVマテリアリティに沿った社会貢献活動です。一方で、こうした活動を通じて社会の禁煙の機運が盛り上がり、健康に対する関心が高まれば、他のタバコを販売しているドラッグストアに対するCSVヘスルの競争力が高まります。

また、CSVヘルスは、社内で従業員向けに金銭的インセンティブを用いた禁煙プログラムの実験を行い、禁煙に高い効果があることを証明しています。CVSヘルスは、この成果を踏まえ、金銭的インセンティブを用いた、従業員向けの新しい禁煙プログラムを開始することとしています。これは、CSVマテリアリティに基づく従業員の健康増進のための取り組みです。一方で、CSVヘルスは、従業員向けに効果が示された禁煙プログラムを社外にも広げていくでしょう。全国的に効果的な禁煙プログラムが広がることは、CSVヘルスの競争優位につながります。

欧米企業は、このように、コーポレート戦略としてのCSVに基づき、ビジネス戦略としてのCSVも実施し、戦略的に競争優位を築こうとしています。日本企業も戦略的にCSVを行うことに、もっと関心を持つべきでしょう。それは、結果として、企業と社会の両方に価値を生み出します。

(参考)

www.csrwire.com/press_releases/37661-CVS-Health-Foundation-Commits-5-Million-to-Campaign-for-Tobacco-Free-Kids-

www.justmeans.com/press-release/cvs-health-foundation-easter-seals-team-up-to-mark-world-no-tobacco-day-with-launch-of

www.justmeans.com/press-release/cvs-health-research-institute-study-finds-smoking-cessation-programs-with-financial

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