政策とCSVイノベーションの相乗効果:食品ロスについて
以前、食品ロスへの企業の取り組みについてのブログを書きましたが、その中で、米国のFood Cowboyという企業をご紹介しました。食品企業が余った食品を近所のフードバンクに、有機廃棄物を農家の堆肥やバイオガス発電用に寄付できるアプリを開発し、サービスを提供している企業です。
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=2367#.V4HS_6Tr3IU
Food Cowboyのサービスを利用する食品企業は、寄付できる食品がある場合、その内容と現在の場所、移動ルート等を連絡します。Food Cowboyは、近くのフードバンクや移動ルート沿いにあるフードバンクの拠点の情報を提供します。同時に、Food Cowboyからフードバンクにも連絡を入れ、その寄付を受け付けるかどうか確認し、受け入れる場合は、その食品を届けてくれるドライバーに連絡します。フードバンクは、届いた食品を確認し、受け付けたことをFood Cowboyに連絡します。Food Cowboyは、フードバンクに代わって寄付の電子領収書を発行、寄付をした企業に送信します。
このサービスが機能するのは、食品企業が食品を寄付した場合に、税控除の対象となるからです。企業は、食品の寄付により課税所得の10%、現物寄付の場合は原価の2倍を上限に税金控除が可能となっています。また、万が一、食品を寄付したことで、意図しない不慮の食品事故が起こったとしても、寄付は善意でおこなったことなので責任を問わない「善きサマリア人の法」という免責制度もあります。
こうした政策が食品ロスに取り組むFood CowboyのようなCSVイノベーションを生み出しています。マイケル・ポーター教授が、適切な環境規制が企業の効率化や技術革新を促し、規制を実施していない地域の企業よりも競争力の面で上回る可能性があるというポーター仮説を提示していますが、「適切な規制がイノベーションを促進する」というところは、間違いないでしょう。
食品ロスに関しては、フランスで今年、「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立しています。貧困対策やチャリティーなどを支持する人権派の議員らが中心となって活動し、成立にこぎつけたもので、フランスのスーパーマーケットは、賞味期限切れ、または賞味期限に近づいている食品を廃棄することができなくなり、その食品をボランティア組織やチャリティー団体に寄付することが求められます。具体的には、比較的多くの廃棄食品が出る400平方メートル以上の大規模店は必ず、貧困対策を行っているようなチャリティー団体と契約を結ぶ必要があり、そうしないと最大で約8万4000ドル(約970万円)の罰金または最大2年の禁固刑を課される可能性があります。
このブログでも何度か書いていますが、食品ロスは、食料の3分の1が廃棄またはロスになっており、温室効果ガス排出量への影響も人間が原因となる排出量の8%を占め、経済的損失も年間9400億ドルに上るとされている大きな問題です。この問題に対して、適切な政策と企業によるCSVイノベーションが相乗効果を生み出すことが期待されます。
(参考)
social-design-net.com/archives/16620
iderumi.com/?p=1428
www.itmedia.co.jp/business/articles/1602/12/news024.html
※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。
bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/index.html