ESG投資からCSV投資へ
最近、ESGに関するニュースが明らかに増えています。GPIFがPRIへの署名に加え、ESG指数の公募を始めるなど、具体的な動きを進めていることなどがその背景にあるのでしょう。投資サイドでも新たなアービトラージの機会として、ESGを見ているのかも知れません。サステナビリティの仕事をして、様々な企業のESG関連リスクに接していると、投資にあたって企業のESGへの感度や取り組みを考慮するのは当たり前のように思いますが、国内のビジネスのメインストリームや投資の世界では、新しい視点と捉えられているのでしょう。
実際、自社のバリューチェーンや戦略とESGとの関係から体系的にリスクを洗い出している企業は限られますので、そこは企業価値の観点からも差別化のポイントとなり得るところだと思います。さらには、自社のCSV/シェアード・バリューの機会を理解し戦略的に取り組みを進めている企業も限られますので、そこにも企業価値向上の機会はたくさん残されているでしょう。
2年前のShard Value Summitのマイケル・ポーター教授の講演の中で、「サステナビリティ投資からシェアード・バリュー投資へ」という話がありました。以前から一部の投資家の要望で、社会的責任投資(SRI)として、倫理的でない企業には投資しないネガティブ・スクリーニングが行われていましたが、その後、企業をESGなどの視点で評価し、優れた活動を行っている企業に投資するサステナブル投資が行われるようになり、また、社会に価値を生み出すことを目的とする企業に投資するインパクト投資も行われるようになりました。ポーター教授は、次に必要なのは、インパクト投資の考えをすべての企業に広げることだとして、すべての企業はシェアード・バリューを創造することができ、そうした企業に投資することが必要だと話をしていました。ここで、ESGへの対応が全体として優れている企業への投資を「サステナビリティ投資」と呼んでいましたが、現在のESG投資はこれに近いでしょう。これに対し、「シェアード・バリュー投資」は、自社の利益・競争力強化につながるESGの機会を洞察し、戦略的に対応している企業に投資するものです。
企業価値を向上させるには、網羅的にESGに対応して情報開示するだけでなく、戦略的に対応してコミュニケーションする必要があります。ポーター教授の言葉を使えば、「サステナビリティ投資」に対応するのではなく、「シェアード・バリュー投資」に対応する視点を持つ必要があります。最近は、投資家向けESG説明会を開催する企業も増えています。そうした場では、社会・環境課題と自社のバリューチェーンの関係から、社会・環境面でのリスクをどのように捉え、どのように対応しているかに加え、CSVの機会をどのように理解し、どのように戦略的に対応しているか、を伝えることが重要だと思います。
※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。