サーキュラー・エコノミーを理解する

2016-10-27 08:48 am

世界的に「サーキュラー・エコノミー(CE)」が注目されていますが、「日本は以前から循環型社会といっており、3Rなども進めている。既に対応済みでは?」という意見も多いように思います。CSVについてもそうですが、新しい概念を良く理解しようとせず、「もうやっています」としてしまう態度は、重要なビジネス機会を失い、長期的な競争力を失うことになります。

今月の日経エコロジーに掲載されている物質・材料研究機構の原田氏のインタビュー記事がCEの本質を良く表現していますので、一部紹介させて頂きます。

「CEを『循環型経済』と訳す方が多いが、大きな誤解を生む。『代謝経済』とでも呼んだほうが良い。資源の流れを血液循環に例えると、CEは、動脈から静脈への循環というよりは、血管の90%以上を占める毛細血管をうまく生かそうとする考え方。製品が使用済みになったらリサイクルして元の素材に戻すという発想ではなく、製品の使用が終わっても、『まだ使えるのではないか』『この部品なら使えるのではないか』または使っていると途中から『これはみんなで使えるのではないか』など、使用中・使用済み製品に関して多様な生涯の送り方を考えるもの。」

「CEは、一度、経済活動の中に組み込んだ資源を徹底して経済活動の活性化に使うことで、最終的に資源の利用を少なくし、廃棄物の排出を少なくするもの。リサイクルにはなるべく回さないほうがいいという考えで、自動車業界ではそうした話が出てきている。自動車をスクラップにせず利用し、いろいろな部品を取り外したりボディとしてリユースしたりすることで、付加価値を生み出す。そこでは、モデルチェンジが余りなく部品が変わらないなどの『循環しやすさ』が価値となり市場が広がる。EUは、そうした市場を政策的に作り出そうとしている。」

「CEの重要な概念としてデュアラビリティ(耐久性)がある。製品として徹底的に使おうとすると耐久性が求められる。耐久性が高まると買い替え需要が縮み経済に影響するという考えもあるが、ここは日本人が一番理解していないところ。今の経済システムを前提に考えて、経済合理性を考えている。CEの一番すごいところは、その経済システム自体を変えようとする試みだということ。今までは製品を大量に売ることで儲けてきたが、それはもう限界であり、もっと大切に使うことに付加価値を見いだし、お金が動くようにしようとするのがCEの一番のポイント。」

同記事では、CEの概念図も示されています。CEはリサイクルが中心ではなく、リユース、リ・フィル(詰め替え)、リ・マニュファクチュア(再製造)、ビルド・トゥ・ラスト(しっかりしたものを作る)、シェア、アップサイクルなど、多様な資源循環による新ビジネスの創出を想定していることが簡潔に表現されています。CEの可能性を俯瞰する上で、参考になるでしょう。

また、アクセンチュアのグローバル・マネジング・ディレクターが『Waste to Wealth』=「無駄を富に変える」というCEに関する書籍を出していますが、同社の朝海氏は、「無駄には4つの種類がある。」としています。「一つめは”資源の無駄”。再利用できない素材やエネルギー源を使うことは、それだけ多くの無駄を発生させる。バイオプラスチックなど再生可能な素材に転換することで、永続的に使うことができる。二つめは”資産の無駄”です。利用される頻度が少ない、あるいはまったく利用されていない資産は企業にとって大きな無駄となる。三つめは”製品寿命の無駄”です。まだ使えるのに捨てられている製品が現在はたくさんある。そして四つめが”潜在価値の無駄”です。製品が廃棄される際に、まだ使用できる部品、素材、燃料などを捨ててしまうことは、その価値をみすみす放棄することを意味する。CEの根本をなす考え方は、それらの無駄をテクノロジーなどの力を駆使して収益に変えていくこと。」

アクセンチュアは、CEは5つのビジネスモデルを生み出すとしています。製品を売り切るのではなくサービスとして提供するモデル、利用頻度の低い製品などをシェアすることで利用価値を最大化するモデル、製品寿命を延長しサービス収益を高めるモデル、廃棄物を回収し資源やエネルギーとして活用するモデル、再生可能エネルギーや生物由来の素材を用いて原料調達のリスクを下げるモデルです。アクセンチュアは、こうしたCEによる経済効果を「2030年までに4.5兆ドル(約540兆円)」と試算しています。

日本企業は、様々なCEに生かせる技術やソリューションを持っています。そうした技術・ソリューションをCEの構想と結びつけ、新たな価値を生み出すことが重要です。CEの概念を良く理解し、「ここには大きな可能性がある。まだまだ取り組むべきことがある」と考えることが大事です。

(参考)
「サーキュラー・エコノミー:日本企業にチャンス」日経エコロジー(2016.11)

bizgate.nikkei.co.jp/article/101354115.html

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

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