統合マテリアリティと価値創造ストーリー

2016-11-24 08:42 am

IIRCの国際統合報告フレームワークが発表されて3年経ち、多くの統合報告書が発行されるようになりました。統合報告書には、所謂オクトパスモデルをベースとした価値創造プロセス/価値創造モデルが示されることが多いのですが、これまでのところ、当該企業の経営の本質をしっかり表現した価値創造モデルに出会ったことがありません。価値創造モデルは、本来は、経営戦略の中核に据えるべきものだと思いますが、これまでのところ、価値創造モデルが中期経営計画などで示されることもないようです。統合報告発行企業では、これからも価値創造モデルを検討することがあると思いますが、是非、経営に統合できる本格的な価値創造モデル作りを目指してもらいたいと思います。

私としては、価値創造モデルは、統合マテリアリティ特定と同じプロセス、出来ればマテリアリティ特定のプロセスと並行して創り上げるのが良いのではないかと考えています。

マテリアリティ特定プロセスのStep1は、評価対象項目の洗い出しです。CSRマテリアリティの場合は、GRI G4、ISO26000、SDGsなどのグローバルスタンダードに、SASBや競合他社のマテリアリティなど業界特有の項目を加えたロングリストから、項目を整理・統合、簡易評価して評価対象のショートリストを作成します。統合マテリアリティの場合は、これに、自社固有の経営視点からの項目を加えます。この経営視点の項目の洗い出しと、価値創造モデルのたたき台作成を同時に行います。価値創造モデルのたたき台は、まず、自社の経営理念、ビジョン・戦略、バリューチェーン、コアコンピタンスなどにかんがみながら、なるだけ自社のユニークネスが際立つように、基本的なビジネスモデルを描きます。そこに6つの資本などをフレームワークとして活用しながら、競争力の源泉となる資本とその強化策を合わせ込みます。非財務資本(個人的にはこの言葉は好きではなく、「未来財務」あたりが良いと思っていますが)に関する取り組みを価値創造プロセスに合わせ込むときには、CSVのフレームワークが活用できるでしょう。この価値創造モデルを作成する中で、経営視点で重要な取り組みが抽出されますが、それをマテリアリティ候補に加えます。

マテリアリティ特定プロセスのStep2は、自社他社視点でのマテリアリティ項目の評価です。自社視点での評価は、機会・リスク・資本強化の観点から、評価対象項目の取り組みの重要度を、部門横断ワークショップ、マネジメントヒアリングなどで議論・評価します。他社視点での評価は、CSRマテリアリティの場合は、アンケートやヒアリングで「ステークホルダーにとっての重要度」を評価しますが、統合マテリアリティの場合は、ステークホルダーの関心が経営にどう影響を及ぼすかを評価します。そのため、ステークホルダーが何故その項目を重視するのか、そのステークホルダーの関心が経営にどう跳ね返ってくるのかを理解する必要があるため、ヒアリングまたはダイアログ形式でしっかり議論する必要があります。また、ヒアリング/ダイアログの対象には、投資家を必ず含めるべきでしょう。統合マテリアリティの場合は、マテリアリティ・マトリックスの縦軸横軸とも「自社経営にとっての重要度」ですが、それを自社の視点、ステークホルダーの視点で評価することになります。

このStep2の自社他社視点での評価を行う際に、Step1で作成したたたき台をもとに、価値創造モデルについても議論します。自社視点評価における部門横断議論やマネジメントヒアリングを通じて、全社的に納得性の高い形に価値創造モデルが練り上げられていきます。また、投資家をはじめとするステークホルダーからの意見も反映することで、社外から見ても理解しやすいものになっていきます。この価値創造モデルの議論と、統合マテリアリティの議論を同時に行うことで、マテリアリティ評価のほうもビジネスモデルを適切に反映したものとなります。

Step3では、マネジメントレベルで、統合マテリアリティおよび価値創造モデルをオーソライズします。そして、経営レベルの合意を得た後、価値創造モデルが今後の経営計画の軸として活用されるよう働きかけていきます。価値創造モデルは、組織・機能の統合、すなわち、R&D方針・戦略、人財方針・戦略、環境方針・戦略などがすべて統合されていることを表現することが理想です。また、社会と企業の統合(企業活動がCSVとなっていること)、短期と長期の統合(時間軸を長く見て継続的に価値創造が行われること)を分かりやすく表現できることが理想です。もし現時点でこうした理想的な統合価値創造ストーリーを描くことが難しければ、時間をかけて活動を進化させていき理想的な統合経営とその表現形式である価値創造モデルを目指すことでも良いと思います。それが、統合報告の存在価値でもあります。

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

csv-jp.org/related_info.html

bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/

CSV戦略ポテンシャル診断サービス
「CSV戦略ポテンシャル診断」サービスページ

Copyright(c) 2012 Cre-en All Rights Reserved.