「ローカルに徹するグローバルCSV企業」ダノン

2017-01-23 07:50 am

今週の日経ビジネスの特集は、トランプ大統領の誕生を踏まえ、短期的な政策の変更に振り回されることのない、長期視点、ミッション視点で企業と社会が価値を共有する「サステナブル経営」です。マイケル・ポーター教授のインタビューも掲載され、「社会的なコストを内部化するビジネスモデルこそが、持続的な成長に欠かせなくなった」「これからの時代は、企業こそが社会変革で最もパワフルな役目を果たすようになる」「これからは、企業が政府やNGOと協力する非常にエキサイティングな時代となる」など、相変わらず説得力のある話をしています。

この特集の関連記事として、日経Digitalに掲載されていたダノンCEOのインタビューが非常に面白い内容でしたので、概要を紹介します。ダノンCEOのエマニュエル・ファベール氏は、以下のように語っています。

「過去、食品業界は世界のより多くの人を飢えから救うため、できるだけ安いコストで食料を供給するため、大量生産による規模のメリットを追求してきた。しかし、世界各地で肥沃な土壌や水が枯渇してきているほか、人類が食料を数種類の「種」に依存するようになった。人類の食料をわずかな「種」に依存することは、とてもリスクが高いことだ。」

「これから大切なのは、人類が必要な食料だけを増やすのではなく、自然の生態系を全体で保全することで、これを「アリメンテーション(栄養・滋養)・レボリューション」と呼んでいる。この取り組みなくして、世界の資源を維持していくことはできない。これからは、生態系を維持していくためにも、世界各地で続いてきた食文化、食習慣、レシピ、食資源を永続させていく必要がある。ダノンは、あらゆる生態系を維持していくというゴールの下に、ローカルでのビジネスを考えている。大量生産の時代から事業環境が変わり、「ローカルに徹するグローバル」に答えがあると信じる。」

「もともとダノンには、経済成長を追うと同時に、社会貢献を果たす企業でなくてはならないという「デュアルコミットメント」という企業哲学がある。しかし、成長する中で利益重視となり、事業ポートフォリオが多角化し過ぎていたため、1996年に就任した2代目CEOフランク・リブーがダノンの次の20年を見据え、企業哲学を見直し、ダノンが手がけるべきビジネスを絞り込んだ(「健康」をミッションとし、ビール事業、ビスケット事業などを売却し、ベビーフード事業などを買収)。ダノンの経営陣には、常に20年先を見据えた経営が求められる。私自身も、2030年のダノンを見据えてビジネスを考えている。」

「株式市場からの短期的利益を求めるプレッシャーはある。確かに、投資家には利益を重視する人もいるが、それ以上に、企業の継続性を求める人が増えている。私はここに、投資家との対話の可能性を見出している。我々が、なぜ、生態系の保全、貧困対策、新興国の酪農家支援に積極的に取り組むのか、これらの取り組みを長期的に続けることが、ダノンの利益成長につながることを丁寧に説明する。そして、大半の投資家は理解を示してくれる。」

「こうした姿勢は従業員にも同じ効果を発揮する。給料や報酬以上に、ダノンが社会に対して貢献している、という実感にやりがいを感じている人が多いと思う。これが短期的な頑張りも生み出す。逆接的だが、長期的な視点で利益を考えることが、短期的なゴールを達成する力を生むと考えている。」

ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持するという考えは、なるほどという感じです。また、長期的にビジネスを考え、投資家に対してESGの取り組みの考え方をしっかり説明できることは、これからのCEOの必要要件ですね。

(参考)
ダノンファベールCEOインタビュー「規模追及はもう限界、理念を軸に会社作り直し」日経ビジネスDigital

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