強制発想で「トレード・オン」を考える

2017-01-30 08:48 am

サステナビリティ領域で長く活躍されているピーター・D・ピーダーセン氏が、著書「レジリエント・カンパニー」で、「トレード・オン」という言葉を使っています。ピーダーセン氏は、レジリエント・カンパニーの特徴の1つである「社会性の追求」において挑むべき行動として、経営・事業の両面において、社会や自然環境とのトレード・オフを許さず、常に、その反対の「トレード・オン」を目指すことを挙げています。

多くのビジネスパーソンは、事業拡大のためにはCO2排出の増加も仕方がない、顧客に安価な製品を提供するにはサプライヤーの労働条件がある程度犠牲になるのはやむを得ないなど、トレード・オフ思考が身に付いています。しかし、このトレード・オフ思考の中にこそ、CSVの機会が潜んでいます。当たり前のように考えているトレード・オフを改めて可視化・構造化して、それをトレード・オンに転換できれば、CSVを創出することができます。

ビジネスデザイナーの濱口秀司氏が、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューで連載されている「SHIFT:イノベーションの作法」の中で、この「トレード・オン」思考を実現する以下の方法を示しています。
1. トレード・オフを構造化(可視化)する。
2. トレード・オフのパターンを壊す。
3. 強制発想する。
(なお、濱口氏は、トレード・オフではなく、バイアス(既成概念)という言葉を使っています。)

例えば、前述の事業拡大とCO2排出の件について言えば、事業(拡大する⇔拡大しない)、CO2排出(増加する⇔増加しない)という形で、まず、トレード・オフ関係を構造化します。そして、トレード・オフのパターンを壊して、事業を拡大する×CO2排出を増加しない、CO2排出増加はそのまま×事業を拡大しないという形を想定します。そして、このトレード・オフを壊したパターンを実現するアイデアを強制発想します。

「事業を拡大する×CO2排出を増加しない」については、バリューチェーン上の生産工程、使用段階のCO2排出削減については、既に取り組まれていることも多いと思いますが、事業を拡大してもCO2排出の絶対量を増やさない、CO2排出をゼロにする、CO2排出をマイナスにするという形でトレード・オフのパターンを壊し、それを実現するアイデアを強制発想すると、よりクリエイティブなCO2排出削減アイデアが出てくるでしょう。一方、「CO2排出増加はそのまま×事業を拡大しない」のほうは、新しい視点を提供するのではないでしょうか。「事業を拡大しない」を「製品の供給量を増加させない」と考えると、サーキュラー・エコノミーで注目される「サービスとしての製品(Product as a Service)」などの新しいビジネスモデルで、製品の供給量を増加させずに、提供価値を最適化・最大化するようなアイデアが生まれてくるでしょう。

実際の課題においては、上記のような単純な構造ではなく、トレード・オフ関係が重層化している形になりますが、トレード・オフ関係を壊して「トレード・オン」を強制発想することは、よりイノベーティブなCSVを創出する上で、有効なやり方だと思います。

(参考)
「レジリエント・カンパニー」ピーター・D・ピーダーセン著(東洋経済新報社、2015年)
「SHIFT:イノベーションの作法④問題の本質から強制発想する」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2017年2月号)

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

csv-jp.org/related_info.html

bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/

CSV戦略ポテンシャル診断サービス
「CSV戦略ポテンシャル診断」サービスページ

Copyright(c) 2012 Cre-en All Rights Reserved.