マイケル・ポーター教授の最新のCSVに関する論調

2017-05-12 04:02 pm

今年もCSVの提唱者であるマイケル・ポーター教授、マーク・クラマー氏らが主催するShared Value Leadership Summitに参加してきました。2011年のCSV論文発表以降毎年開催されており、私もCSVの最新の潮流を体感する良い機会として参加するようになって、今年で5回目になります。

今年のテーマは、”Leading a New Narrative”で、「既存の常識に囚われず、新しいストーリーを創り出せ」といった感じでしょうか。トランプ政権が誕生し、企業は社会問題などに関心を持たず短期的利益を追求すべき、という新自由主義的考えが常識として復活することを懸念してのものでしょう。こういう時代だからこそ、ビジネスが社会を良くするためにリーダーシップを発揮すべきという考えです。

具体的な内容としては、ダイバーシティ、人権をテーマにしたセッションもあり、雇用や人材育成など、“人”に関わるものが多かった印象です。人的資本を高め、社員にやりがいをもたらし、社会を良い方向に変えつつ、企業の競争力を強化するというCSVの考え方です。最近の日本の働き方改革とも共通するものです。

Summitで印象に残ったセッションの内容は、今後このブログでも紹介していこうと思いますが、今回は、マイケル・ポーター教授の最新の論調を紹介します。例年、基調講演としてスライドを使いながらプレゼンするのですが、今年は、フォーチュンで世界のCSV先進企業50社のリスト”Change the World List”を主導するアラン・マレー氏とのパネルディスカッションのスタイルでした。以下、概要です。

冒頭に、昨年ポーター教授がCEO100人とともにローマ法王に招かれたことが紹介されました。ローマ法王は、気候変動をはじめとする世界の問題解決にビジネスが重要な役割を担うと考えており、CSVの推進を期待しているようです。最近は、TEDトークにもビデオで登場し、ビジネスによる社会問題の解決への期待を示しています。これに関しては、ポーター教授はいつもの論調で、政府でも市民セクターでもなく、多大なリソースや能力を持つビジネスこそが、社会問題を解決できると強調していました。

その後、マレー氏から「企業は実際のところどういうパッションを持って、CSVに取り組むのか?」とやや突っ込んだ感じで質問がありました。ポーターの論調は、社会の要請、従業員の期待といったものでしたが、特に従業員が、企業がパーパスを持った行動をすることを期待しているということを強調していました。最近のミレニアル世代論で良く言われる、人材の意識変化を踏まえた回答でした。

次に、マレー氏から「株主はどうなのか、株主は企業にCSVではなく短期的利益の追求を期待しているのではないか?」という質問があり、ポーター教授もSRIやインパクト投資などはあるが、マジョリティの投資家は、まだCSVを理解していないと認めていました。ここで、短期的利益を追求する3Gキャピタルによるユニリーバ買収提案の話題が出てきましたが、企業を買収してコストや人を削減して短期的利益をあげることを繰り返す3Gキャピタルのやり方に資本主義の未来はなく、短期的利益と長期的ビジョンを両立させるユニリーバに代表されるCSVの考え方に資本主義の未来があるという論調でした。ただ、企業はリソースを効率的に活用しなければならず、社会価値の追求をそうしないことの言い訳にしてはならないとも言っていました。また、ESGに関しては、範囲が広く網羅的で、戦略的に取り組みを選択するCSVとは異なると考えているようです。

その後、最近注目されるAIなどのデジタルテクノロジーの話題になりました、ポーター教授は、基本的には、農業社会→工業社会→知識社会と進化してきたように、テクノロジーは人間の生産性を向上し、新しい社会を創り出すと考えているようです。これに関しては、マレー氏から、デジタルテクノロジーは格差を生み出すのではないかとの突っ込みがありましたが、人にはAIとは異なる役割があり、最近はそうした変化も見据えて、AT&Tやウォルマートの例を示しながら、企業が人材教育に投資するようになっていると回答していました。

その他、政治やリーダーシップに関わる話もありましたが、全体的には、いつものポーター教授の論調で、「CSVはより良い資本主義をもたらし、CSVからこそユニークな競争優位がもたらされる。この7年で、CSVの新しい市場は拡大する一方だ。リーダーは、社会に価値をもたらすパーパスを掲げて、CSVを追求すべき。」という感じでした。

この7年で、ポーター教授の主張に大きな変化はありません。デジタルテクノロジーなど,
急速な変化もありますが、CSVの機会は、少し時間をかけながら広まっているのは間違いないと思います。我々も変わらずCSVを追求し続けるべきだと改めて感じました。

(参考)
フォーチュン”Change the World List”について

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=2563#.WRVdt2ewfIU

ユニリーバと3Gキャピタルのユニリーバ買収提案について

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=2826#.WRVd6mewfIU

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

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