「ジョブ理論」によるCSVの可能性

2017-08-17 10:01 am

世界の経営思想家トップ50(Thinkers50)で連続トップとなっている「破壊的イノベーション論」の提唱者クレイトン・クリステンセン教授の「ジョブ理論」は、従来のマーケティングを超える新しい視点を提供してくれます。データ分析による相関関係の把握を超え、「顧客が片付けたい用事(ジョブ)は何か?」、「どんなジョブを片づけたくて、その商品・サービスを雇うのか?」という視点で、因果関係をしっかり把握します。

「ジョブ理論」は、クリステンセン教授が「破壊的イノベーション論」で世界の大きな影響を与えた「イノベーションのジレンマ」に続く著書「イノベーションの解」で紹介されました。米国で朝多くのミルクシェイクが売れるのは、「仕事先まで、長く退屈な運転をするのに、時間をつぶし小腹を満たして欲しい」というジョブを片づけるためだ、という話で有名です。クリステンセン教授の新著「ジョブ理論」は、この理論について過去20年に練り上げてきた成果がまとめられています。「ジョブ理論」では、CSVの参考となる事例や考え方も多く示されていますが、2つ事例を紹介します。

1つ目は、キンバリークラークの成人向け失禁製品です。紙おむつ世界2位のキンバリークラークは、おもに疾患や加齢による失禁に悩む人たち向けに成人用紙おむつで大きなシェアを獲得していました。しかし、「片付けるべきジョブ」のレンズを通したところ、手つかずの大きな市場があることを発見しました。同社の調査によると、50歳以上のほぼ40%、18歳以上の女性の3人に1人が失禁や尿漏れなどに悩まされていましたが、店で成人用おむつを購入するくらいなら、何もせずに我慢するという諸費者がおおぜいいました。恥ずかしさや不安のため、社会的なかかわりをさけるなど、QOLが大きく低下していたのです。キンバリークラークは、こうした洞察をのもと、成人用おむつを買ったり付けたりすることに対する購入者の不安をなくすべく、素材と製法から根本的に見直し、パッケージを含む見た目も着け心地も一般の肌着とまったく変わらない製品を創り上げ、大きなヒット商品としました。

2つ目は、CSVの事例としても良く紹介されるユニリーバのライフボーイです。新興市場の子どもたちを5歳まで生存させる手助けをするという壮大なゴールにジョブ理論を埋め込み、子どもたちに、細菌を除去するのに十分な時間手洗いをさせることを実現しました。以前は、細菌除去には30秒が必要とされていた手洗い時間を、特殊製法により10秒で可能とした上で、10秒手を洗うと泡の色が変化するという工夫をして、子どもたちが面白がって10秒以上、手洗いをするようにしました。ライフボーイは、子どものいのちを救うというゴールに、消費者が片づけようとしているジョブを具体的に結びつけ、ライフボーイを大きく成長させました。

これらの事例から見えてくるのは、社会課題を解決する製品を開発するだけではダメで、顧客が片づけようとしているジョブと結びつけなければ市場は創造できないということです。製品・サービスのCSVを実現するためには、社会課題と顧客のジョブを結びつけて考えることが必要です。私も「ジョブ理論」の視点も入れて、「CSV理論」をさらに進化させていきたいと思います。

(参考)
「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン他著(ハーパーコリンズ・ジャパン、2017年)

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

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