GPIFのシェアード・バリュー

2017-08-21 09:29 am

ここ2年くらいで、ESGという言葉がかなり普及しました。日本におけるESGの広がりを牽引しているのは、間違いなくGPIFです。2015年9月にPRIに署名し、運用委託機関にもPRIへの署名を求めました。その結果、2015年までに30程度だった国内におけるPRI署名数が50以上に急増しています。今年7月には、日本株の3つのESG指数を選定し、指数に連動したパッシブ投資を約1兆円で開始したことを発表しました。今後3~5年かけて3兆円規模に増やす方針とされています。

GPIFが急速にESG投資にシフトしたのは、何故でしょうか。背景には、2014年の運用方針見直しがあります。従来は、資産の60%を国内債券に振り向け、国内株への投資は12%でしたが、第二次安倍政権がデフレ脱却を目指す中、国内債券偏重の資産構成が金利上昇の影響を被りかねないとして、政権側からの要請もあり、国内債券の割合を35%に下げ、国内株の割合を25%に上げました。さらに、国内株式の上下変動率を6%から9%に拡大し、最大34%まで比率を高めることができることとなりました。この結果、GPIFによる国内株への投資が大きく拡大しました。

GPIFは、このような背景で国内株への投資を拡大する中、ESG重視を打ち出しました。ESG重視の狙いとしては、企業統治の安定性、環境・社会面のリスク低減による中長期的な成長への期待、株価下落リスクの軽減などがあると思います。

一方で、利息がゼロもしくはマイナスの国内債券への投資が難しい中、現在すでにGPIFの日本株の比率が基本的な上限の25%に近くなっており、上限を超えて投資する口実として、「ESG優良企業への選別投資」を掲げているという見方もあります。GPIFの国内株投資については、株高を演出し市場をゆがめているという批判もありますが、こうした批判をかわす狙いもあるという見方もあります。

GPIFの高橋理事長は、ESG投資に関してインタビューで語っています。「これからの優れた経営者は、利益を上げて株主だけを見るのではなく、自分の事業エリアを通じて社会を多角的に見る必要がある。自分たちがこういう経営をすると格差が大きくなりそうだと感じたら、『利益は若干減って株主に迷惑をかけるけど、ここはこうしたほうがいい』と考えられる経営者が増えていく必要がある」「そういう経営者が増えないと、外から(規制などで)問題を是正することになり、経済全体では非効率になるかもしれない。自社の業績だけを追求し周りに迷惑をかける企業が減って、ESGの評価の高い企業が増えるほうが、産業としては効率的になり、市場も底上げされる」

GPIFの本質的狙いがどこにあるにせよ、ESGへの関心が高まり、企業が社会・環境問題に積極的に取り組むようになることは良いことです。日本株への投資を維持・拡大することがGPIFにとっての価値となり、その中でESG投資が拡大することが社会の価値となるのであれば、GPIFのシェアード・バリューとして戦略的に進めていってもらえればと思います。

(参考)
「GPIF、新型運用に“秘めた”狙い」日経ビジネス2017.07.17号
「金利ゼロでも国債は必要-GPIF高橋理事長インタビュー」日経ビジネス2017.08.21号

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡下さい。

csv-jp.org/related_info.html

bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/

CSV戦略ポテンシャル診断サービス
「CSV戦略ポテンシャル診断」サービスページ

Copyright(c) 2012 Cre-en All Rights Reserved.