農業とSDGs:17ゴールすべてについて考えてみる

2017-11-29 06:22 pm

先日、仕事の関係で「農業とSDGs」について考える機会があり、農業がSDGsの17ゴールとどう関わっており、どう貢献できるかを一通り検討してみました。

SDG1「貧困」:農業は、お金を稼ぐ手段として、貧困解消に貢献します。また、食料を自給自足することで、貧困層のレジリエンスを高めます。食品企業などでは、サプライチェーンのCSVで、農家の生活を向上させることができます。

SDG2「飢餓・持続可能な農業」:農業の生産性を上げることは、飢餓の撲滅に貢献します。持続可能な農業は、農業が進むべき道です。

SDG3「健康・福祉」:栄養ある食物を提供することは、人々を健康にします。また、太陽の下で体を動かす農業は、認知症ケアに貢献するなど、健康・福祉に貢献します。

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SDG4「教育」:農業のバリューチェーンにおける児童労働問題の解決は、児童に教育機会を提供します。また、一般的な食育に加え、それを支える農業に関する知識・体験を含む「食農教育」を広げる動きもあります。

SDG5「ジェンダー平等」:女性の視点を生かして女性向けの農業作業着、農業機械などを開発し、農業に従事する女性を増やそうとする「農業女子プロジェクト」などが進められています。

SDG6「水・衛生」:世界の淡水の7割を利用する農業を節水型にすることは、水問題に大きく貢献します。水を効率利用する点滴灌漑などが注目されています。

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また、昔は日本でも、排泄物を肥料として活用していましたが、最近は、バイオトイレに進化しています。

SDG7「エネルギー」:農地は、基本的に日照が良い場所です。すなわち、太陽光発電にも適しています。そこで、農地の上にソーラーパネルを設置して、農業と太陽光発電を同時に行おうとするソーラーシェアリングが登場しています。

SDG8「経済成長・雇用」:最近は、農業に関心を持つ若者も増えているようですが、こうした若者に、経済的な安定と働きがいを与えるような農業としていくことは、大事です。食品企業などのCSVとしてのサプライチェーン農家の育成では、そうした観点が重要です。

SDG9「インフラ・イノベーション」:ノルウェーの肥料メーカー「ヤラ」は、タンザニアの農業の発展には、港湾・道路・鉄道・電力が必要と考え、自らがイニシアチブを取り、政府・他企業・市民組織を巻き込み、こうしたインフラを整備しています。

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また、最近は、デジタルテクノロジーやドローンを活用した「アグテック」のイノベーションも進んでいます。

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SDG10「不平等」:働きたくても働けない人達、働く意欲がわかない若者達に、働く喜びと自立した生活を届けるためのプログラムとして立ち上げられた「農スクール」は、ホームレス、生活保護受給者やニートの若者達に、”農”を通じた様々なプログラムの体験を通して「やりがい」や「仕事観」「自己肯定感」を得ながら、農業への就労機会を提供しています。

SDG11「持続可能な都市」:最近は、高層建築物の階層、傾斜面などを使用して垂直的に農業を行う「垂直農法」など、都市型農業も進化しています。都市に自然をもたらす都市型農業は、持続可能な都市づくりに貢献すると思います。
三菱地所グループが展開する、都市と農山村をつなぐ「空と土プロジェクト」なども、持続可能な都市づくりに貢献する取り組みだと思います。

SDG12「持続可能な生産消費」:このブログでも何度も取り上げている食品廃棄は、SDGsの中でも、注目度の高いターゲットです。農業でも、従来は廃棄されていた形の悪い野菜を有効利用する、食品廃棄物を肥料として活用するなど、様々な取り組みが進められています。セブンファームでは、イトーヨーカドーの食品廃棄物を堆肥化し、その堆肥を使った野菜を栽培する「完全循環型の食品リサイクル」に取り組んでいます。

SDG13「気候変動」:農業分野でも気候変動の緩和の取り組みがいろいろ進められています。「農業トリジェネレーション」は、熱源から熱、電気に加えて発生するCO2を、農作物の生育促進に利用するもので、CO2の大気への排出削減に貢献します。

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また、気候の影響を受けやすい農作物は、気候変動で適地が北上しています。気候変動に適応できるよう、栽培作物を変えたり、品種改良を行っていくことが必要となっています。

SDG14「海洋生態系」:農業から排出される汚染物質による海洋汚染を防ぐことがこのゴールに貢献します。また、陸上養殖は、漁業ではなく農業のカテゴリーに入るようですが、間接的に海洋生態系を保全することにつながります。

SDG15「陸域生態系」:少し前にジョンディアの取り組みを紹介しましたが、農薬の使用を減らすことは、基本的には、生態系保全に貢献します。

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また、自然の生態系に倣った多種の農林産物を共生させながら農業を行う「アグロフォレストリー」も、生態系保全に貢献します。

SDG16「平和・公正」:人口が増え、人々がより豊かな生活を求める中で、食料不足、水不足などが顕在化する恐れがあります。食料を自給して他国と争奪する必要をなくしたり、農業における水利用を削減することは、争いの原因を減らすことにつながります。また、農家兼弁護士のような方が増えると、農業における司法アクセスが強化されることになります。

SDG17「パートナーシップ」:SDG9で紹介したヤラは、タンザニアでのインフラ整備にあたって、多国籍企業、市民組織、国際支援団体、タンザニア政府など68組織を巻き込みSAGCOT(Southern Agricultural Growth Corridor of Tanzania)という団体を立ち上げています。バリューチェーンのCSVにおける農家支援は、企業と農家とのパートナーシップです。

このように、業界単位などで、17ゴールへの貢献可能性を考えてみると、SDGsへの具体的な取り組みのヒントになります。私のブログにも、ネタは豊富にありますので、是非、トライしてみて下さい。

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。

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