2017年のCSRトレンドは、企業のリーダーシップ

2017-12-18 09:58 am

2017年も振り返りの時期になりました。CSR領域に強い米国のPR会社のコーン・コミュニケーションが、2017年のトップ10CSRトレンドを発表しています。米国中心のトレンドではありますが、世界の動きを俯瞰する上では、示唆に富んだトレンドだと思います。

トランプ政権の誕生以降、政治は内向きになっています。異常気象や国内外での暴力が目立つ中、米国人の67%は、政府が対応しないことで、社会課題への取り組みは停滞すると考えています。一方で、63%の米国人は、ビジネスが、重要な社会環境の変化をリードすると考えています。実際、2017年は、企業の社会課題解決に向けたリーダーシップが目立った年でした。コーン・コミュニケーションが選ぶ以下のトップ10CSRトレンドにも、企業の社会課題へのリーダーシップ発揮が反映されています。

1. 企業が社会的不公正に立ち上がる: 企業が社会的公正に対して声を上げたことが、2017年の最大のトレンドと言って良いでしょう。大企業から中小企業まで多くの企業が、様々な課題に対して声を上げています。IBMは、オバマ前大統領が導入した、若年不法移民の国外強制退去を2年延期して就労機会を与えるプログラムについて、トランプ政権が廃止を表明したことを受け、如何に同プログラムを通じてIBMで働く若者が価値を出しているかをウェブサイトで共有するなどして、廃止の影響を受ける若者を支援しようとしています。

2. クローズド・ループによる価値創出: 最近のクローズド・ループの取り組みは、従来とは異なり、コラボレーションで進められています。42Belowというウォッカ企業は、オーストラリアとニュージーランドで、バーから使用したレモンを集め、独自のプロセスで石鹸に変えています。そして、この取り組みに参加するバーに、取り組みを紹介することを条件に石鹸をただで設置しています。ティバーランドは、ハイチの道路に捨てられているプラスチックボトルを集め、スレッドというBコーポレーションと協働で繊維に変えて、シューズ、Tシャツ、バッグに使用しています。

3. 大胆に立場を表明する: 2017年には、多くの企業が、重要だが注目が不足している課題に対して大胆に立場を表明しています。例えば、米菓子メーカーのKINDは、ニューヨークのタイムズスクエアに45,485ポンドの砂糖の山を出現させることで、米国の子供たちが5分ごとにどれだけの砂糖を食べているかを視覚的にアピールしました。

4. 異なる意見への対話を促進する: 現在のような複雑な時代には、感情的な議論を巻き起こす課題について、正直かつ安全に対話することが難しくなっています。ハイネケンは、意見の異なる2人が、それとは知らずに一緒にバーを作り、その後意見の相違を明らかにしつつ、ビールを飲みながら対話するビデオを作成し、対話の重要性をプロモーションしています。その他、ヴィックスが、インドのトランスジェンダーの問題、グーグルがシリア問題について、対話を促すプロモーションを実施しています。

5. 企業横断コラボレーション: 現在の多くの喫緊の課題は、複雑で単独で解決が難しいものばかりです。こうした課題に対して、企業や競合を含む多様な企業と協力して、変化を起こそうとしています。ダノンとネスレは、100%バイオベースのリサイクル可能なペットボトルの商業化に向けて、アライアンスを構築しています。P&Gとワールプールは、協働して、移動コンテナでP&Gの洗剤とワールプールの洗濯機、ドライヤー、アイロンを運んで、災害支援を行っています。

6. アクティビズムが成果をあげる: ハッシュタグキャンペーンや路上デモなどを通じて、2017年には、個人のアクティビズムが勢いを増しています。結果として、多くの企業が、行動変化や更なる透明性を求められています。ウーバーは、職場のセクシャルハラスメント問題などで批判され、ダイバーシティ報告を発行し、課題を認めて今後の取り組みを示すこととなりました。ナイキは、ジョージタウン大学の生徒から不公正な労働キャンペーンの対象とされ、ジョージタウンと交渉して、労働者の権利を監視する団体の工場へのアクセス許可などについて合意しました。

7. 業界レベルでの重要課題への取り組み: 特定の業界の企業が、共通の課題の解決促進に向け、協働し始めています。食品飲料業界は、2017年に、ハーシーなどが中心となり、消費者により多くの情報を提供するため、積極的に透明性の課題に取り組みました。

8. コーズ・マーケティングのより広い目的へのシフト: コーズ・マーケティングにおいて、現在の重要課題へのタイムリーな取り組みなどが求められています。乳がんの啓発活動は、以前は十分な取り組みと考えられていましたが、最近は、コーズ・マーケティングとしては、ほとんど注目されなくなっています。

9. 女性の平等とエンパワメントがさらに重要に: 1月の260万人のグローバルな女性マーチから、最近の#MeTooムーブメントまで、女性の平等の問題がますます重要となっています。多くのブランドが、積極的に女性の平等とエンパワメントに関するキャンペーンを実施しています。

10. 企業が災害支援で独自の強みを発揮: 複数のハリケーン、カリフォルニアの森林火災など、米国でも自然災害の被害が深刻化しています。そうした中、企業の資金的支援も増えていますが、コア・コンピタンスに基づく支援も増えています。ジェットブルーは、プエルトリコのハリケーン災害に対し、プエルトリコへの就航が最も多い航空会社として、必需品の空輸、航空チケット価格の上限設定、緊急支援に向かう人たちへの座席提供など、多面的な支援を行っています。

このように、海外では、企業が政府に代わり、社会課題解決のリーダーシップを発揮する、社会課題解決のために、様々な企業を含むマルチステークホルダーと協働するといった動きが目立ちます。社会課題解決の主人公が企業になるという動きは、大きな潮流となっています。日本企業は、まだ政府の動きを気にかけている印象がありますが、政府の動きを追っているようでは、世界からは取り残されてしまいます。企業が社会課題の解決をリードする時代感覚を持ち、社会課題解決にリーダーシップを発揮することは、グローバル企業として認められる条件になっていると思います。

(参考)

www.triplepundit.com/2017/12/year-csr-top-10-trends-2017/

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