社会課題に対応するブランディングをどう成功させるか?

2018-01-15 09:22 am

本年1月号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文「社会の理想と企業の成長を両立させるブランド戦略」は、企業が社会課題に対応するブランディングをどのような考え方で行っていくかについて、参考となる考え方を提示しています。ミレニアル世代で企業の社会課題への取り組みへの関心が高まっていることなどを反映し、「パーパス・ブランディング」など、企業が社会課題に対応したマーケティング、ブランディングをするケースが増えています。そうした取り組みは、成功することもあれば、失敗することもあります。如何に社会課題に対応するブランディングを成功させるか、上記論文は、対応する社会課題をどう選ぶか、取り組みを誰にどう伝えるかの考え方を示しています。

社会課題をどう選ぶかについて、CSR活動などで、自社のマテリアリティを特定している企業も多いと思いますが、ブランディングにあたっては、「ブランドの伝統」、「商品の外部性」、「顧客の葛藤」の3つの観点での検討を行います。「ブランドの伝統」とは、そのブランドが顧客に与えてきた最も顕著なメリットです。「商品の外部性」は、自社の商品・サービスのバリューチェーンが社会に与える悪影響です。この2つは、ブランドが対応すべき社会課題の検討にあたって、基本的な視点だと思います。

「顧客の葛藤」は、自社ブランドの顧客に関係がある社会課題のうち、意見の対立が大きいものです。顧客は、そうした社会課題に対して葛藤を感じることがあり、それを解消したいという欲求が生じます。そうした社会課題への葛藤を解決するという視点は、ブランドにインパクトを与えます。例えば、米国では、移民問題で意見が対立していますが、バドワイザーは、スーパーボウルのCMで、移民として米国にやってきた同社創業者の1人のストーリーを伝えました。

こうした3つの視点を総合的に考えて、取り組むべき社会課題を検討します。最終的には、候補となった社会課題が、事業価値の創出と自社がさらされるリスクの最小化をどのように両立させるかを評価します。具体的には、重要なブランド属性を強化するか、ブランドの隣接市場を開拓するか、顧客・消費者にネガティブなイメージを持たれるリスクはないか、などを検討します。

顧客・消費者のイメージについては、ブランドが取り組みを検討している社会課題を、顧客・消費者がどのように受け止めるかをよく考えることが大切です。例えば、「オーガニック原料」というブランド属性は、食品などでは、おいしくて健康的なポジティブなイメージになりますが、洗剤などでは、洗浄効果が弱いのでは?というネガティブなイメージを持たれる恐れがあります。こうしたことを避けるためには、ブランドが社会的メリットを主張した場合に、消費者がどのようなイメージを抱くかを、ポジティブなものとネガティブなものの両方について、慎重に評価することが必要です。

すべての社会課題には、擁護派と批判派が存在するため、社会課題を掲げてブランディングする場合、一定の批判を受けることは確実です。提案する社会課題への対応を重要なステークホルダーが受け入れ、支持してくれるか、どのステークホルダーにどのようなメッセージを伝えるかを慎重に検討する必要があります。

ナイキは、この10年、製造プロセスの廃棄物削減に取り組んでいます。その流れの中で、2012年にフィライニット技術を開発しました。これは、シューズのアッパー部分を一体成型することで、製造プロセスの廃棄物を削減できる技術です。ナイキは、フライニットによるシューズを、環境に良い商品として消費者にアピールすることも出来ましたが、そうはしませんでした。ナイキの高機能シューズの顧客は、履き心地、軽さ、耐久性などを求めており、環境配慮はそうした顧客にとって重要な属性ではなく、むしろ耐久性等に懸念を持たれる恐れがあると判断したからです。一方で、環境配慮については、それを重要な業務慣行ととらえるステークホルダーである、パートナー企業や投資家に対して、メッセージを発信しました。このように、ステークホルダーごとにどのようなコミュニケーションをするかを検討することは、重要です。

なお、パーパス・ブランディングについては、以下のブログ記事もご参照下さい。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=2918#.WlquyhEUldg

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=2703#.WlquYxEUldg

(参考)
「社会の理想と企業の成長を両立させるブランド戦略」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2018年1月号

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。

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