TCFDが求めるシナリオ分析をどう実施するか

2018-02-21 10:47 pm

世界主要国の財政・金融当局、中央銀行による金融安定理事会(FSB)が設立した、金融の安定性という観点から気候変動問題を議論する、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告書において、シナリオ分析にもとづく情報開示が推奨されたことで、サステナビリティ業界では、シナリオ分析が注目されています。

具体的には、TCFDで推奨される情報開示の4項目、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の「戦略:気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在および潜在的な影響を開示する」において、「2℃或いはそれを下回る将来の異なる気候シナリオを考慮し、当該組織のレジリエンスを説明する」が示されています。

気候変動の企業にとってのリスクとしては、異常気象の影響、降雨パターンの変化、気温の上昇、海面の上昇などの「物理的リスク」、政策・法規制、技術(新技術投資)、市場(消費者の行動変化、原材料コスト)などの「移行リスク」があります。これまでは、気候変動のリスクとしては、「適応」においても、物理的リスクのほうが注目されていたように思いますが、「2℃或いはそれを下回るシナリオの考慮」は、移行リスクを重視しているようにも見えます。昨年、英仏政府が2040年までにディーゼルやガソリン車の新車販売を禁止する方針を発表したことなどから、移行リスクの企業経営への影響への関心が高まっているという背景もあるのかも知れません。

このシナリオ分析の要請にどう対応するかですが、一般的なシナリオ分析は、①社会の長期的変化を捉えるためのファクト・予測を整理し、自社に影響を与える変化要因(ドライビングフォース)を抽出、②ドライビングフォースの中から、自社事業へのインパクトが特に大きく、不確実性の高いものをシナリオの骨格となるキードライビングフォースとして設定、③キードライビングフォースの変化の組合せにより複数のシナリオを策定、④現実がどのシナリオに近づいているかを理解するための先行指標を設定しつつ、各シナリオに対応した戦略を準備、といった具体に進めます。

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TCFDが求めているシナリオ分析では、対象が「気候関連のリスクと機会」に限定されており、基本的には気候変動リスクの中から、キードライビングフォースを設定する形になるでしょう。そうした検討の過程では、インパクトは大きいが、不確実性が少ない変化要因も抽出されますが、それに対しては、しっかり備えることが求められます。TCFDでは、気候変動の影響を潜在的に大きく受けるセクターとして、非金融セクターでは、「エネルギー」「運輸」「材料と建物」「農業、食料、林産物」が挙げられていますが、運輸業界における温室効果ガス排出規制や食品業界における原材料調達地域の変化などは、シナリオ分析をするまでもなく、対応が必要なものです。

また、気候関連のリスクと機会に関するシナリオ分析にあたっては、既存のシナリオの活用が必須です。物理的リスクに関する2℃シナリオとしては、IPCCのRCP2.6、移行リスクに関する2℃シナリオとしては、国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook」の450ppmが有名ですが、これらのシナリオの下での自社のレジリエンスを示すことが必要です。

いずれにせよ、シナリオ分析を実施する最大の意味合いは、ファクトを押さえた上で、世の中の変化とその影響に対する洞察力や感度を高めることです。その感覚が社内に浸透すれば、気候変動をはじめとする様々な変化に対するレジリエンスが高まるでしょう。

(参考)

sustainablejapan.jp/2017/06/29/tcfd-final-report/27274

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