SDGsの食料・農業、都市分野の新しい市場。CSV的な「手ごろな価格の住宅」な
SDGsとビジネスに関するレポートで最も良く引用される「より良きビジネス、より良き世界」では、「食料と農業」「都市」「エネルギーと材料」「健康と福祉」の4分野、60の領域で、2030年までに年間12兆ドルの市場機会が生まれ得るとしています。60領域は、4分野ごとに、潜在市場規模の大きい順に並べられています。
「食料と農業」分野では、「バリューチェーンにおける食料廃棄の削減」「森林生態系サービス」「低所得層向け食品市場」「消費者の食品廃棄物の削減」などが、潜在市場機会が大きいものの上位に来ています。バリューチェーンにおける食料廃棄の削減については、収穫後の保存が不適切となるために食品廃棄となるケースが多く、小型の金属やプラスチック製の貯蔵庫などの市場が想定されています。実際、インドやアフリカでは、そうした技術で、食品廃棄が60%削減され、小規模農家の収入が30%向上したことなどが報告されています。
森林生態系については、以前、植樹の市場機会についてブログを書きましたが、森林や水源保全は、新しい市場機会を生み出すと考えられています。
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=3276#.Wr7xlkxuJdg
「都市」分野では、「手ごろな価格の住宅」「建物のエネルギー効率」「電気およびハイブリッド車」などが、潜在市場機会が大きいものとして挙げられています。この中でも、「手ごろな価格の住宅」は、2030年に最大1.08兆憶ドルと大きな市場を生み出すと考えられています。2030年には、世界人口の60%が都市に住むと予測される中、住居や建物の建築・改築の巨大な市場が生み出されますが、一方で、都市住民の多くは従来の住宅を購入するだけの収入がなく、「手ごろな価格の住宅」を提供するイノベーションが求められています。
最近、貧困層向けの4,000ドル、24時間で建てられる3Dプリントの家の情報がありました。米国の3Dプリント建設会社ICON社がNPOと協働で開発したもので、持ち運び可能な建築用3Dプリンターを用いて、快適で耐久性も高い600-800平方メートルの一軒家を短時間で安価に建てられるというものです。廃棄物もほぼ出さないとのことです。
ideasforgood.jp/2018/03/27/3d-printing-house/
この住宅自体は、途上国の農村向けに開発されたものですが、都市の有望市場である「手ごろな価格の住宅」にも応用可能でしょう。そう言えば、以前イケアが、難民向けの1,000ドル程度のシェルターを開発したとの情報がありましたが、こうしたものも「手ごろな価格の住宅」につながるものでしょう。
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=954#.Wr8OS0xuJdg
日本では、東日本大震災の際に、大手住宅メーカーが、低価格の仮設住宅、復興住宅を提供するという動きがありましたが、そうした活動を通じて蓄積された低価格住宅提供のノウハウは、新しい市場で展開できる可能性があるはずです。ICON社やイケアの例もそうですが、「手ごろな価格の住宅」は、途上国や被災地、難民支援とシナジーがあります。また、ICON社の3Dプリンターのように、新しいテクノロジー活用、新しいビジネスモデル構築のポテンシャルのあるものだと思います。CSVにマッチする市場ですね。
(参考)
「Better Business Better World」「Valuing the SDG Prize in Cities」(Business and Sustainable Development Commission)
※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。
bizgate.nikkei.co.jp/series/007620/index.html