Shared Value Leadership Summit 2018:マイケル・ポーターの講演

2018-05-07 08:59 am

今年も世界からCSVのリーダーが集うShared Value Leadership Summitに参加してきました。今年のテーマは、”INNOVATE. INSPIRE. ACT”で、組織における意識付けや実践を重視する内容となっていました。「ジャーニー」という言葉も良く聞かれましたが、CSVのコンセプトが広まった後、実践には時間がかかるということが明らかになってきて、CSVのジャーニーを如何に進めていくかということが、重要な論点になっています。

このブログでもSummit全体の内容を伝えていこうと思いますが、まずは、毎年の全体のトーンを象徴するマイケル・ポーター教授の基調講演の内容を紹介します。ポーター教授も、一時期は、デジタルテクノロジーと戦略に関する論文の執筆に積極的な印象があり、CSVに対する関心は薄れているのかと思ったことがありますが、今年は、CSVへのコミットメントを感じさせました。時代の潮流に対する感度の高い人なので、CSVにフォローの風が吹いていると感じているのでしょう。以下、概要です。

CSV論文を発表して7年後の今、Shared Valueに関するムーブメントが進化し、面白い時期になっている。ビジネスの社会における役割について、何をすべきかまだ混乱はある。しかし、ビジネスおよび資本主義が本質的に変化している。ビジネスにも社会的役割が求められるようになり、フィランソロピー、CSR、そして7-8年前から、Shard Valueが広まっている。CSRは重要ではあるが、基本的に社会への悪影響を軽減するもの。その次のステップとして、ビジネスそのもので社会にインパクトを与えるShared Valueが求められている。次のステップに向けて、時間はかかっているが、いろいろな基礎がつくられてきており、皆が、ビジネスが社会にインパクトを与えるべきことには同意する。インパクトとは何か?については、いろいろな議論はあるが、このSummitに参加している企業の取り組みなど、実績は出来てきている。

これまでは、投資家が問題とされてきた。投資家は、基本的には、社会インパクトを求めることは利益を減らすと考えてきた。しかし、投資家も社会インパクトに対応するようになってきており、社会的問題のある企業には投資しない、企業をESG指標でランク付けし、それを考慮したポートフォリオを組むなどの取り組みをしている。小さい動きではあるが、インパクト投資なども行われている。そして、2018年に大きな動きがあった。ブラックロックが企業に社会的目的(Social Purpose)の追求を求める手紙を出した(下記ブログ参照)。他にも同様な考え方を持っている投資家がいる。昨日も。CNBCで、「ウォールストリートのアクティビストや投資家が、社会や環境の取り組みに自分たちのお金を使い始めている。彼らは、それを利益が上がるもの見ている」という記事があった。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=3260#.Wu0cgExuJdg

こうした流れの中で、ビジネスリーダーには実践が求められている。ビジネスに社会的役割を求めるコンセプトとして、サーキュラーエコノミー、グリーンキャピタリズム、ネットポジティブなどいろいろなものがある。しかし何をすべきかが、提示されていない。トリプルボトムラインはShared Valueに近いが、具体的に何をすべきかのガイド(プレイブック)はない。CSRの取り組みは行われてきたが、次のステップでは、社会課題にビジネス、ビジネスモデルで対応することが求められる。ビジネスには利益が必要。利益があるからこそ、資本主義のマジックを活用できる。利益があるからこそ、持続可能でスケールすることができる。社会課題への取り組みを純粋にビジネスとして考える必要がある。世界はそれに向けた準備ができている。

今でも環境や安全への対応がコストになるというトレードオフ思考を持っている人はいる。そうした人は、外部性の考えに囚われている。例えば、環境負荷は無駄があることを示しており、それをなくすことでコストが下がる。これまでは経済学者の作った観念に囚われてきた。しかし、市場を通じて社会課題は解決できる。ビジネスの仕事は、HOWを実践すること。様々な事例が集まってきており、投資家の考えも変わってきた今が実践すべきとき。

Shared Valueは、単に良きことをするのではなく、戦略である。戦略とは差別化すること。社会・環境課題への対応で差別化することができる。バリューチェーンの様々な側面も、Shared Value思考で進化させることができる。Shared Valueは、ゼロサムではなく、プラスサムの競争を追求し、競争のやり方を変える。Shared Valueの考えで、様々な機会、戦略の方法が広がる。Shared Valueには多くの事例があり、プレイブックを提示している。

流通のダースベーダーのような存在だったウォルマートは、Shared Valueでビジネスのやり方を変えた。ビジネススクールでは、Shared Valueが当たり前に教えられるようになった。世界各地でShared Valueのイニシアチブが進められている。フォーチュンではShared Valueの優れた企業をリスト化している。いろいろなピースは集まりつつある。Shared Valueの機会は広がりつつある。私は世界の将来を楽観的に見ている。Shared Valueに向けた変化は始まったばかりだ。

※CSV推進にご関心のある方は、mizukami@cre-en.jpまでご連絡ください。

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