ポール・ポールマン氏の退任で、サステナブル・リビング・プランはどうなるか?
ユニリーバのポール・ポールマンCEOが今年末で退任することとなりました。後任には、来年1月1日に同社美容品・パーソナルケア部門トップのアラン・ジョーブ氏が就任するとのことです。2009年1月からCEOを務めるポールマン氏は丁度10年で退任することになりますが、このタイミングでの退任発表は、やや唐突な印象があります。背景には、英国とオランダの2本社体制の英欄ユニリーバの本社をオランダ本社一本に切り替えようとしたポールマン氏に対する英国株主の反発があると言われています。ポールマン氏や株主の対応の背景には、ブレグジットの影響もあるのかも知れません。
消費財業界は、低成長や小規模ブランドとの競争などの課題を抱えており、ペプシコ、ネスレ、ケロッグなど多くの企業でCEOが交代しています。ユニリーバも、2017年に更なる利益成長を求める投資ファンドから買収を仕掛けられています。
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サステナビリティ業界にいる者として気になるのは、サステナブル・リビング・プランはどうなるのか?です。2010年に発表された「2020年までに10億人以上がより衛生的な習慣を身につけられるよう支援します」などの大胆な目標を掲げたサステナブル・リビング・プランは、経営とサステナビリティを統合したビジョンとして、サステナビリティ業界のモデルとなっています。ESG、SDGsなどへの関心が高まり、多くの企業がサステナビリティに関するビジョンを掲げるようになって現在でも、最も優れたビジョンと言っても良いでしょう。ユニリーバはさらに、サステナブル・リビング・プランの進捗を毎年報告し、真摯に取り組みを進めています。
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サステナブル・リビング・プランの策定は、間違いなくポールマン氏のリーダーシップによるものであり、2020年の目標期限が迫る中、ポールマン氏が退任するとしても、次のサステナブル・リビング・プランを作ってからだと思っていました。しかし、このタイミングで退任することにより、次のサステナブル・リビング・プランは、ジョーブ氏の手にゆだねられることになりました。
ユニリーバ創業者のリーバ氏は、ビジネスを通じて暮らしをよりよくするため、衛生的な習慣を広めるために石鹸を発売しており、ユニリーバは、ビジネスを通じて社会課題を解決するという理念を受け継いでいます。また、サステナブル・リビング・プランは、途上国などの新しい市場を開拓するには、社会課題への取り組みが不可欠であるとの戦略的な側面もあります。さらに、サステナブル・リビング・プランが優秀な人材を惹きつけるなど、長期的競争力を高めている側面もあります。そのため、サステナブル・リビング・プランが継続されるのは間違いないと思いますが、その内容がどうなるか、大胆な内容で世界にインパクトを与えることができるかが問われます。
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ユニリーバのCEOだけでなく、SDGs推進など企業セクターのサステナビリティ推進のリーダーとして様々な活動をしているポールマン氏には、引き続きサステナビリティ経営のリーダー役を担ってもらいたいと思いますが、ユニリーバのほうは、ジョーブ氏がポールマン氏のサステナビリティの遺産をしっかり引き継ぎ、発展させることを期待したいですね。
(参考)
www.marketingweek.com/2018/11/30/the-five-challenges-facing-unilevers-new-ceo/
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bizgate.nikkei.co.jp/series/DF260320183652/