ラリー・フィンクの手紙2019

2019-02-04 06:18 pm

先日、世界最大の資産運用会社ブラックロックCEOラリー・フィンク氏の2019年の年次レターが世界の投資先企業に送付されました。投資先企業に対し、長期的な発展のために、財務パフォーマンスだけでなく社会に価値を生み出すことを求めた昨年の年次レター「A Sense of Purpose」は、従来の企業の目的は利益を最大化することだとの考えに疑問を投げかけ、大きな話題となりました。

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今年のレター「Purpose & Profit」は、昨年のレターを踏襲し、パーパスの重要性をより具体的に説いています。

www.blackrock.com/corporate/investor-relations/larry-fink-ceo-letter

ブラックロックは、年金など長期資金の運用を請け負っており、投資先企業が長期的に企業価値を創造し続けるよう、長期視点での経営を促すのは当然です。ラリー・フィンク氏は、「パーパス」が長期的に企業価値を創造するためのカギであると考えています。

市場、政治、テクノロジー、環境、人々の意識など様々な面で、現在が不確実な時代、時代の変曲点であるということは、共通認識となっています。そして、様々な課題について、政府が十分な解決策を提供できていないこともあり、企業への社会・経済課題への対応に期待が高まっています。

そうした中で、フィンク氏は、「パーパス」が不確実な時代の企業経営の軸として極めて重要と考えています。フィンク氏の手紙では、パーパスを「企業の基本的な存在理由」と定義し、ステークホルダーのために如何なる価値を創造するか存在理由を示すもので、単に利益を追求するのではなく、利益の実現に生命を吹き込むものだとしています。パーパスは、戦略の意思決定や経営判断の軸となり、マネジメント、従業員、顧客、コミュニティなどのステークホルダーの一体感を醸成し、正しい行為を促しステークホルダーの期待に反する行為にブレーキを掛けます。それが、長期的な財務リターンも生み出すとしています。

フィンク氏は、ミレニアル世代の影響力についてもレターで言及しています。労働人口の35%を占めるミレニアル世代は、63%が「企業の主たる目的は、利益を上げることではなく、社会を良くすることだ」と考えており、特に優秀な人材を獲得するには、パーパスが必要となっています。また、24兆ドルの富がベビーブーマーからミレニアル世代にシフトし、ミレニアル世代は投資家としても影響力が大きくなっています。そのため、投資におけるESGでの企業評価が益々重要になっています。

ブラックロックは、企業とのエンゲージメントを強化し、その中で、パーパスと企業文化、戦略との整合についても言及し始めています。2019年の優先課題としては、取締役のダイバーシティや長期視点をもたらす報酬制度などを挙げていますが、パーパスもエンゲージメントの重要なトピックスとなる可能性があります。

昨年のラリー・フィンク氏の手紙は、議論を巻き起こしましたが、今年の手紙とそれに基づくブラックロックのエンゲージメントは、企業に具体的な行動を促すでしょう。「パーパス」、「長期視点での経営」について、企業はこれまで以上に真剣に考え、取組む必要があります。

(参考)

www.greenbiz.com/article/what-larry-finks-2019-letter-means-future-business

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参考CSV情報

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bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2856747026032018000000?page=5

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