企業が変わるとNGOも変わる。「対立」から「協働」へ

2012-11-02 08:39 am

一昔前、NGOと企業が対話するとき、その結果は「寄付」か「対立」でした。

NGOは基本的に社会問題を解決することを目的としています。したがって、企業が社会問題を引き起こしているとき、NGOは社会問題を解決するために、企業と「対立」します。

典型的な例が、1997年のナイキの労働問題です。ナイキは、自社でデザインを行い、生産は東南アジアの工場に委託していましたが、東南アジアで児童労働・強制労働が行われていることが発覚しました。

ナイキは、当初、「契約工場の問題で自社に責任はない」としていましたが、まずインターネット上で批判が展開され、多くのNGOが立ち上がり、ナイキの不買運動を行いました。

その結果、ナイキの売上は激減、創業以来はじめて前年比売上がマイナスとなりました。

ナイキは、その後、態度を改め、企業責任担当の副社長を外部から招聘し、ナイキに寄せられる企業責任に関する様々な社会的要請にマネジメントレベルで一元的に意思決定を行う体制を構築しています。また、GAP、世界銀行などとともにNGOを設立し、途上国の工場の労働環境を調査し、改善策を策定しています。

このように企業が社会問題を起こす立場から、社会問題を解決しようという立場に変わったとき、NGOと同じ方向を向くようになり、NGOとの関係は「対立」から「協働」に変化します。

ナイキ以外でも、ウォルマートは、町の商店街とコミュニティを破壊している、低賃金で社員を働かせ搾取している、海外で人権侵害にあたる労働環境で労働者を働かせている、などの批判を受け、サステナビリティの活動を強化するようになり、WWFとサステナブルな原料調達で協働しています。

コカ・コーラは、インド南部で水不足の問題が起こったときに、工場で大量の水の利用を継続していたため、水不足の元凶と見なされました。その後、コカ・コーラは、WWFと協働で水資源の保全に向けた取り組みを強化しています。

また、ユニリーバは、貧困問題解決のためにオックスファムと、環境問題解決のためにレインフォレスト・アライアンスと協働しています。他にも、コストコ、BP、イケアなど、多くの企業がNGOとの協働で社会問題の解決に向けた取り組みを強化しています。

NGOの基本戦略は、企業の行動を通じて社会問題を解決することであり、企業が社会問題を引き起こしていれば、その方向を変えさせようと「対立」し、社会問題を解決しようとしていれば、その行動を促進すべく「協働」します。

社会問題に知見のあるNGOと、社会問題を解決する力を持つ企業が協働した場合、社会問題は解決に向けて大きく前進します。

企業が社会価値側面に目を拓き、企業価値と社会価値を両立させるCSV*の取り組みを進める場合、社会問題に精通しているNGOとの協働は、非常に有効な戦略となります。まずは、対話から始めることでも、新しい知見が得られ、大いに意味があると思います。

(参考)

www.justmeans.com/blogs/NGOs-Partnering-with-Business-to-Accelerate-Shared-Value/2907.html

「持続可能な未来へ」ピーター・センゲ著(日本経済新聞社、2010年)

*) CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)について

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436

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