イノベーションの7つの機会とCSV

2012-11-28 05:57 pm

ドラッカーは、成功したイノベーションのほとんどは、天才のひらめきではなく、イノベーションの7つの機会に対する体系的な探求から生まれているとしています。イノベーションの7つの機会は、産業内部の4つの機会、産業外部の3つの機会に分かれます。

産業内部にある4つの機会は、「予期せぬこと」「ギャップ」「ニーズ」「産業構造の変化」です。「予期せぬこと」は、言葉通り予期せぬ成功と失敗です。思わぬ成功と失敗を分析し、その意味合いを理解し活かすことは、競合との差別化につながります。「ギャップ」は、課題と言い換えてもいいかも知れません。他社に先んじて事業上の課題や社会の「ニーズ」を理解し、それを対応することがイノベーションを生み出します。「産業構造の変化」は、すなわち、新しい事業が生まれるということです。

産業外部にある3つの機会は、「人口構造の変化」「認識の変化」「新知識」です。

「人口構造の変化」は、最も確実に変化が想定できるもので、「すでに起こった未来」とも言われます。20年後に労働市場に参入する若年労働者は、すでに生まれています。人口構造の変化は、出生率や平均寿命の変化から推測される将来の年齢別人口構成などだけではなく、教育水準や経済的豊かさ、さらには、思考様式などの内面についても考えることが必要です。今後、10~15年くらい先を見た場合には、高齢者となるベビーブーム世代とともに、ワークライフバランスを重視し、仕事に面白さを求めるY世代(1980-1995年ごろの生まれ)がどう職場や社会を変えていくかに注目する必要があるでしょう。

「認識の変化」は、コップに半分水が入っているという認識からコップが半分空であるという認識に変わることです。人々の認識が変わり、まだ問題が解決されていない、まだ満たされていないという認識が広まるときがイノベーションの機会となります。また、これまでの固定概念が変わり、新しい認識が生まれるときもイノベーションの機会です。

他のイノベーションの機会に比べ、「認識の変化」は、自ら創り出しやすいものです。ノボ・ノルディスクは、中国市場での糖尿病の啓発活動を通じて、糖尿病に関する認識を変え、糖尿病治療薬の市場を創り出しています。

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=242

オイシックスが、「傷があったり形が悪かったりする野菜は売れない」という認識を覆し、「ふぞろい野菜」をヒットさせた例なども、「認識の変化」を自ら創り出した事例です。

「新知識」は、科学技術や社会に関わる新知識に基づくイノベーションです。発明や発見などの新知識は、製品として社会に価値を生み出してはじめてイノベーションとなります。

例えば、iPS細胞は重要な発見ですが、これ自体はイノベーションではなく、製品化されて社会を変えてこそ、イノベーションとなります。

CSV*としての社会問題を解決するイノベーションを生み出すには、「人口構造の変化」と「認識の変化」への着目が重要ではないかと思います。

「人口構造の変化」は、今後、社会貢献意識の高いY世代の消費者としての影響力が強まりますが、これは、CSVにとっての機会を生み出します。また、「認識の変化」は企業自らが創り出すことが可能です。社会問題を解決するイノベーションを阻害している「認識」を変化させるための啓発活動は、そのものがCSVとなるでしょう。

(参考)

「テクノロジストの条件」P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社、2005年)

「ワークシフト」リンダ・グラットン著(プレジデント社、2012年)

*CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)については、以下を参照

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319

www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436

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