日本のCSV先進企業: ユニ・チャーム
ユニ・チャームの「ユニ」には、「ユニーク」の意味も込められているとのことですが、横並び色が強い企業が多い日本において、ユニークな価値を提供している企業だと思います。
アジアの成長も取り込みながら、売上高は10期連続、営業利益は5期連続で過去最高を更新しています。生理用品、ベビー用紙おむつ、ペットケア用品、大人用排泄ケア用品を主力商品としていますが、GDPの成長とともにこの順番で商品が普及するポートフォリオとなっています。
今回は、途上国向けの生理用品と先進国向けの大人用排泄ケア用品に関して、ユニ・チャームのCSV*戦略をご紹介します。
ユニ・チャームは、アジアの主要参入各国でトップシェアを獲得していますが、次の狙いをインドに定めています。インドでは知識不足もあって生理用品が普及しておらず、古布などで代用する人が多いようです。そのため、生理中は学校を休んだり外出を控えたりすることが多く、衛生用品を使うことで女性の社会進出を促すことができます。
衛生用品の普及を通じて「女性の社会進出」という社会課題を解決するために、ユニ・チャームが用いているのが、「競争基盤/クラスターのCSV戦略」の一つ「需要条件の創造」です。「需要条件の創造」は、社会に役立つ商品の普及を促進するために、知識啓発、消費者教育等を行う戦略です。
ユニ・チャームは、インドで国際協力機構(JICA)や現地NGOと協力して、女子生徒に対して初潮についての講習会を実施しています。体にどんな変化が起き、どう対応すれば良いか、生理用品をどう使えば良いかなどを教えています。地元の女性ボランティア100人を育成し、地域ごとに講習会を開催し、当面は約1万人の女子生徒に対する講習を予定しています。
このような活動を通じて、インドで生理用品に対する知識を広め、自社製品の普及につなげる戦略です。
一方、日本では、超高齢化社会に対応するため、「排泄ケア」に注力しています。排泄ケアは、食事、入浴とならぶ三大介護のひとつで、自立して排泄できるかどうかは非常に重要な社会課題です。ユニ・チャームは、適切な排泄ケアを行うことで、寝たきりを防ぎ、人々の健康寿命を延ばすことを目的に、世界初の高齢者用「ライフリーリハビリパンツ」を1995年に発売、改良を重ねています。また、製品の提供と併せて、介護施設に専門のプロケア営業員とケアアドバイザーを派遣し、正しい商品知識の啓発や排泄ケアの改善を介護施設のスタッフと一緒に行っていくライフリーケア活動を実施しています。
ライフリーケア活動などを通じて、排泄ケアの知識やリハビリパンツの使用は恥ずかしいものではないという知識を普及しています。また、介護の現場で活動することを通じて、介護における課題を発見、解決策を検討し、改善につなげています。そうしたプロセスを通じてCSV戦略の1つである「社会問題を解決する製品・サービスの創造」を実践しています。介護される側だけでなく、介護者の負担も減らすという課題に対応し、夜間のおむつ交換の負担を軽減するために開発された尿吸引ロボット「ヒューマニー」はそのような活動を通じて開発された製品の一つです。
社会課題に対応した製品・サービスの普及を促進する「需要条件の創造」、社会課題の現場での観察を通じた「社会問題を解決する製品・サービスの創造」。ユニ・チャームのCSV戦略から学ぶことは多いのではないでしょうか。
(参考)
「女性支援、すなわち販促」朝日新聞(2013年2月28日朝刊)
ユニ・チャームCSR報告書2012
「ユニ・チャームの本業を通じたCSR」
www.cre-en.jp/library/changing/detail_009/
*「CSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)」については、以下を参照
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=162
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=319
www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=436