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知見・事例

住友金属鉱山のコミュニケーションを軸としたCSRの推進(1/2)

  • 平井 明子 様(住友金属鉱山株式会社 安全環境部 CSR担当主任)
実施年月日 2013年4月2日
聞き手 株式会社クレアン 安藤 正行

※ 本原稿は、平井様へのインタビューおよび、住友金属鉱山のWebサイトの情報などを参考に作成しました。

住友金属鉱山株式会社 会社概要

住友金属鉱山は、銅、金、ニッケルを中心とした資源の開発から、鉱物より金属を生み出す製錬事業、そして電子材料・機能性材料の製造事業までを展開する、グローバルな非鉄金属メーカーです。

会社名 住友金属鉱山株式会社
設立 1950年(昭和25年)
創業 1590年(天正18年)
本社所在地 〒105−8716 東京都港区新橋5丁目11番3号(新橋住友ビル)
資本金 932億円
従業員数 連結8,658名/単独2,164名
ホームページ http://www.smm.co.jp/

CSR活動の本格スタート

安藤:本日はお時間をいただきありがとうございます。御社は2008 年に「地球および社会との共存」を目的に掲げ、CSR方針および重点6分野と2020年のありたい姿を策定されるなどCSR活動を本格化されたことと思います。元来、住友事業精神を基盤に社会的責任への意識の高かった御社が、どういったことをきっかけにCSR活動を本格始動されたのでしょうか。

平井氏:JCO臨界事故後の2003年に策定した中期経営計画で非鉄メジャークラス入りを宣言したことが大きかったと思います。宣言を起点に2005年にはフィリピンのコーラルベイにおいて製錬事業を開始するなど、海外への事業展開の強化を進めてきました。資源開発・製錬という事業は、他の業種に比べても地域社会との関係性構築が不可欠で、海外における進出先のコミュニティと信頼関係を築いていくためには、従来日本で行ってきたやり方だけでは不十分であり、見直す必要があると考えました。

安藤:CSR活動をスタートされるにあたり、特に何が重要であると考えられたのでしょうか。

平井氏:社内展開としては2008年にCSR活動のキックオフというかたちをとったのですが、その前年である2007年に経営層が集まり「住友金属鉱山にとってのCSRとは何か」をテーマにワークショップを8回開催しました。そこでの議論の中で、自分たちは資源供給を担うサプライチェーン最上流に位置しているが、B to Bであるがために社外とのコミュニケーションが不足しているのではないか、という問題意識が共有されました。CSRの推進体制を立ち上げましたが、6つある部会の中に「コミュニケーション部会」を設けたのにはそうした背景があったのです。

安藤:なるほど、CSR活動推進における大事な軸として「コミュニケーション」を据えられたわけですね。ところで、2008年が社内展開へのキックオフということでしたが、当初の社員の方たちの反応はどうだったのでしょうか。

平井氏:「CSRとは何か」「なぜ必要なのか」ということを社内で理解してもらうために社内報に3回ほど特集記事を掲載してアナウンスしたのですが、正直なところ最初は「新しいマネジメントシステムがまた始まり、仕事が増えてしまうのではないか」といった反応が多かったと聞いています。2000年台前半は、環境マネジメントの規格であるISO14001の取得やリスクマネジメントシステムの導入を全社的に進めてきていた経緯もあり、現場に負担感が募っていたという事情もあったのだと思います。

安藤:そうした状況をどのように打開されたのですか。

平井氏:トップの力が大きかったと思います。住友金属鉱山にとってのCSRの目的を「地球および社会との共存」というわかりやすいメッセージに乗せ、社員に向けて繰り返し発信していただけました。グローバル戦略の加速とCSR活動の推進が表裏一体であること、そしてトップの本気度が社員にも伝わったものと思います。ただ、全社員の6割が国内勤務者ということもあり、本来の意味で「自分ごと」として捉えるという意味では、現在もまだ道半ばであると感じています。

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