ライブラリ

知見・事例

シチズンのCSVウォッチ"CITIZEN L Ambiluna"誕生ストーリー(1/2)

CITIZEN L Ambiluna
  • 櫻井 沙織 様(シチズン時計株式会社)
  • 山田 富士子 様(シチズンビジネスエキスパート株式会社)
  • 福嶋 信人 様(シチズンビジネスエキスパート株式会社)
実施年月日 2016年4月20日
聞き手 株式会社クレアン 水上 武彦、秋山 映美

シチズンが、レディスウオッチブランドとしてグローバルに展開している“CITIZEN L”の新たなコレクション“CITIZEN L Ambiluna”を発表しました。2016年秋に発売予定です。CITIZEN L Ambilunaは、“Beauty is Beauty”「美しいものは美しいマインドから生まれる。内側の美が外側を輝かせる。」というブランドコンセプトを体現している画期的なCSVウォッチです。時計に用いられている材料を明らかにするために製品成分表を公開し、時計のライフサイクルでのCO2排出量を公開し、使用する材料にコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo:DRC)やその周辺国を原産地とする紛争鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)が含まれていない「DRCコンフリクトフリー」を宣言しています。

クレアンでは、シチズンで2014年末から2015年初めにかけて5回シリーズでCSVセミナーを実施させて頂いていますが、このセミナーもCSVウォッチ誕生に貢献しています。“CITIZEN L”は、以下のようにして誕生しました。

商品企画とCSRのコラボレーション

2014年の夏、“Beauty is Beauty”をコンセプトとするCITIZEN Lの新しいコレクション提案を考えていた商品企画担当の櫻井さんと宮川さんは、「美しいとはどういうことか?」「どういう女性が美しいと思うか?」「美しいとイメージする女性には何か共通点があるような気がする」と真に美しい時計とは何か考えていました。しかし、時計のデザイン要素以外で美しさを表現する方法については良いアイデアがありませんでした。

そんな時、ガールスカウトの経験のある宮川さんの前を、たまたま国連Tシャツを着ていたCSR担当の山田さんが通りかかりました。少し前に櫻井さんはCSR報告書の取材を受けて面識がありましたが、国連Tシャツに何かピンときた2人は、山田さんと意気投合し国際社会の様々な課題やCSVという考え方を初めて知ることになりました。

山田さんは、以前から、シチズンという社名の持つ意味や企業理念「市民に愛され市民に貢献する」からCSVの概念が合う会社だと感じていました。シチズンはその企業理念に基づき、40年前から光発電エコ・ドライブなど人や地球に優しい技術の開発に取り組んできました。さらに数年前からは、シチズンでCSVを推進することが必要と考え、自身も別の女性用腕時計ブランド“クロスシー(xC)”で、Because I am a Girlキャンペーンを支援するコーズマーケティングを時計事業会社へ提案し実現していた山田さんは、気候変動、紛争鉱物などの社会課題や他社の取り組み事例に関する情報を提供しました。ここで、商品企画とCSRのコラボレーションが生まれました。

環境部門とのコラボレーション

他社のCSR事例や社会課題を広く捉えていた山田さんから、製品成分表公開、ライフサイクルでのCO2排出量公開、紛争鉱物フリーなどのアイデアが出てきました。ここで、営業、商品企画、開発を経験し、社内に人脈のある山田さんが、「環境マネジメント室に福嶋さんというプロがいるので相談してみよう」と提案し、福嶋さんに相談することになりました。一方の福嶋さんは、環境マネジメント室の責任者となって5年の間に、世界中の環境法令に対応できるようシチズン製品の含有化学物質管理のデータベースを構築していました。

3人の話を聞いた福嶋さんは、データベースの蓄積があるため、製品成分表の公開は、ほぼ問題なくできるだろうと考えました。また、CO2排出量の公開については、一部生産担当の協力があれば、産業環境管理協会のカーボンフットプリントプログラム(CFPプログラム)に基づく対応が可能と考えましたが、ちょうど、日本時計協会でCFPプログラムに必要なCFP-PCR(製品種別基準)が固まったところでした。早速、CFPプログラムにエントリーし、時計として初めて認定を受けることにしました。紛争鉱物フリーについても、含有化学物質管理データベースで、いわゆる紛争鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)のサプライヤーを把握することができたため、全サプライヤーに紛争鉱物原産国に関する確認をし、DRCコンフリクトフリーの宣言が可能となりました。

1

2