ライブラリ

知見・事例

SDGsの開示状況調査結果

冨田 洋史
(株式会社クレアン 統合報告支援グループ コンサルタント)

2015年9月に「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」が採択されてから1年が過ぎました。SDGsに対して様々な取り組みがそれぞれのセクターで進められていますが、企業セクターにおいてどのように進んでいるのでしょうか。

その状況を知る、ひとつの指標として、日本企業の時価総額上位100社のCSRレポート(統合報告書含む)においてどれだけSDGsに関する開示を行っているのかという点を簡単に調査しました。今回は、その結果から見えてくることを伝えさせていただきます。

1.40%近くの企業がSDGsに言及

今回対象とした100社中、38社がSDGsについて言及しているという結果となりました。WBCSDが加盟企業を対象に実施した調査※1でも約30%ということでしたので、日本企業のSDGsに対する認識は高いことがうかがえます。一方で、上位10社だけで数字をとった場合、2社しか開示していないという結果を踏まえると、テーマとしての浸透が不十分であるともいえます。

情報開示におけるSDGs言及企業の割合

2.活動の下地ができあがりつつある

報告書内でどのような言及をしているかという点を見ると、SDGsへどのような活動するかという下地づくりが確実に進んでいる点もうかがえます。重要課題や方針へ既に組み込んできた企業が17社あり、何かしら言及している企業のおよそ半数がCSRの戦略に組み込んだということになります。採択から1年という間でここまで完了していますので、あとは実際に活動が進むのを待つばかりです。さらに進んできる企業では、新たなイニシアチブを立ち上げる、基金を設立するなどが行われており、活動の進展を来年度以降期待したいところです。

統合報告書におけるSDGs言及企業の割合

3.グローバル企業の対応が先行

業界別に見ると、商社、電気機器、食品といったグローバル展開が求められる企業の対応が早いのが読み取れそうです、一方で、サービス、小売、鉄道・バスなどの国内中心の業界では言及する企業の割合が少なくなっています。しかし、SDGsは国内課題でもあり、首相を本部長としたSDGs推進本部も政府内に設置され、実施方針も検討されていますので、"SDGsは途上国向けの開発目標"という誤った認識を早く払拭する必要がありそうです。

開示内容の分類

今回の調査は数が限られた範囲で報告書上での結果でしかありませんが、先進的に取り組む企業と、SDGsへの認識が遅れている企業の格差が生まれているような結果となりました。「誰も置き去りにしない-leaving no one left behind」が標語のアジェンダですから、そういった状況を打破すべく、私たちのような企業もしっかりと企業の方々にSDGsについて伝えていかなければいけないと改めて感じます。

  • ※World Business Council for Sustainable Development"Reporting matters Communicating on the Sustainable Development Goals WBCSD 2016 REPORT"
【調査概要】

調査対象:日本の株価時価総額上位100社(2016年9月30日時点)
調査時点:2016年10月20日

  • ※第三者意見での言及は「記述なし」に分類
  • ※CSR報告書またはそれに準じる報告書を調査。統合報告書に集約されている企業は統合報告書を調査
  • ※「未発行」企業は、調査時点で2015年度の報告書が未発行の企業