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知見・事例

SDGsの開示状況調査結果(2017年)

冨田 洋史
(株式会社クレアン 統合報告支援グループ コンサルタント)

2016年1月に「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」への活動が始まってから2年が過ぎました。政府、市民社会、自治体、企業を問わず、多くのアクターが持続可能な開発目標(SDGs)に対して積極的に取り組みを開始しています。

当社では、SDGsへの企業活動の進度を測るひとつの指標として、株式時価総額上位100社のCSR情報開示(統合報告書含む)におけるSDGs関連情報の調査を2016年より行っています。今回は、2017年の結果から見えてくることを伝えさせていただきます。

1.約70%の企業がSDGsに言及

2017年の調査では約70%の企業がSDGsに関して何かしらの言及を行っています。2016年の調査では約40%であったことと比較すると、企業セクターの中でSDGsへの受け止め方が大きく転換していることがわかります。

特に、産業界に大きな影響力を持つ上位10社に関して、2016年は2社しか開示が行われていなかったものが、今回の調査では、8社が言及を行っているという点は大きな違いです。経団連などの業界団体も積極的にSDGsへの貢献を宣言していることもあり、関心のある一部の企業だけではなく、産業界全体の課題になりつつあることがうかがえます。

情報開示におけるSDGs言及企業の割合

2.投資家向けの情報発信でもSDGsを重視

統合報告書での言及が増えている点も2016年からの大きな違いです。2016年から割合が倍増して、約60%の企業が統合報告書で言及しています。GPIFやPRIの動きも含め、多くの機関投資家がSDGsへの関心を表明しています。こうした動きが、IRとしてのSDGsの情報開示にも多くの影響を与えていることが見て取れます。

統合報告書におけるSDGs言及企業の割合

3.活動の下地から次のステップへは時間が必要

開示内容を分類すると、多くの企業で2016年同様、「トップメッセージなどでの課題表明」や「方針・重点課題へのSDGsの組み込み」といった方法でSDGsに言及しています。 また、「CSR活動とのマッピング」と「その他」の項目が特に増えています。「その他」は、社内浸透や社会課題としての認識を表明するものが大半を占めています。

上記の点を加味すると、CSR部内での情報整理や社内浸透など、活動の下地づくりが活発に進んでいることがうかがわれます。一方で、多くの企業が目指す、事業部門を通じた活動やSDGsのための新たな活動の加速には、まだ時間がかかっているのが現状です。

開示内容の分類

SDGsはこれまでの取り組みを加速させるためのゴールなので、いかに取り組みを進められるかが重要です。また、GRIや国連グローバルコンパクト、PRIなどが共同で理想的な情報開示のあり方をまとめるなど、既存の取り組みを紐づける以上の、より本質的な情報開示も求められ始めています。そのため、実際の取り組みにどの程度シフトしていけるかが今後の企業の課題になりそうです。

  • ※国連グローバルコンパクトとGRIが共同で"Reporting on the SDGs"という取り組みを2016年よりスタート。日本からは、クレアンともう1社が参加。
【調査概要】

調査対象:日本の株価時価総額上位100社
調査時点:2018年1月15日時点

  • 注釈:
    ①第三者意見での言及は「記述なし」に分類
  • ②CSR報告書またはそれに準じる報告書を調査。統合報告書に集約されている企業は統合報告書を調査
  • ③「未発行」企業は、調査時点で該当年度の報告書が未発行の企業